「リサーチをしたけど、結局何を判断すればいいかわからない」——この失敗は、計画の時点で決まっている。
目的が曖昧なリサーチは、曖昧な結果しか生まない。「ユーザーのことを知りたい」では広すぎる。「登録後に離脱する理由を特定し、オンボーディングを改善するかどうか判断したい」——ここまで具体化して初めて、適切な手法を選び、成果につながる調査ができる。
リサーチ計画はリサーチの成否を決める最重要ステップだ。
1. 定義
目的・仮説・手法・スケジュールを明確にし、成果につながるUXリサーチを設計するプロセス。
「何を知りたいか」「知った結果、何を判断するか」を明確にし、適切な手法とスケジュールを計画する。計画がないリサーチは、時間とリソースの無駄になる。
2. リサーチ計画の5つの要素
1. 背景(Background)
なぜ今この調査が必要なのか
- プロジェクトの状況
- 現在抱えている課題
- これまでにわかっていること
2. 目的(Objective)
この調査で何を判断したいのか
背景と目的の違い
- 背景 = なぜ今この調査が必要なのか
- 目的 = この調査で何を判断したいのか
悪い例
- 「ユーザーのことを知りたい」
- 「使いやすさを確認したい」
良い例
- 「登録後に離脱する理由を特定し、オンボーディング改善の優先順位を決める」
- 「新機能のプロトタイプで、タスク完了率80%以上を達成できるか検証する」
3. リサーチクエスチョン(Research Questions)
具体的に答えを出したい問い
- ユーザーは登録後、最初に何をしようとするか?
- どの画面でつまずいているか?
- なぜその行動を取るのか?
悪い例: ユーザーは満足しているか?(抽象的すぎる) 良い例: 登録後のどの画面で離脱が起き、何がその原因になっているか?
4. 仮説(Hypothesis)
現時点での予想
- 「おそらく○○だろう」という仮説を持ってリサーチに臨む
- 仮説があると結果の解釈がしやすい
- 仮説が覆されることも重要な発見
5. 手法とスケジュール(Method & Timeline)
どの手法を使い、いつ実施するか
- 目的に合った手法を選択
- 参加者募集、実施、分析、報告のスケジュール
- リソース(予算、人員)の確認
3. リサーチ計画書テンプレート
# リサーチ計画書
## 1. 背景
[プロジェクトの状況、なぜこのリサーチが必要か]
## 2. 目的
[このリサーチで何を達成したいか]
## 3. リサーチクエスチョン
- [具体的な問い 1]
- [具体的な問い 2]
- [具体的な問い 3]
## 4. 仮説
- [仮説 1]
- [仮説 2]
## 5. 手法
- 手法: [インタビュー / ユーザビリティテスト / サーベイ 等]
- 参加者: [対象ユーザー、人数]
- 実施形式: [対面 / リモート]
## 6. スケジュール
| 項目 | 期間 |
|---|---|
| 計画・準備 | ○月○日〜○月○日 |
| 参加者募集 | ○月○日〜○月○日 |
| 実施 | ○月○日〜○月○日 |
| 分析 | ○月○日〜○月○日 |
| 報告 | ○月○日 |
## 7. 成果物
- [インサイトレポート / 改善提案 / 意思決定のための根拠]
## 8. ステークホルダー
- [意思決定者、結果を使う人]
4. 目的から手法を選ぶ
「なぜ」を知りたい → 定性手法
| 状況 | 手法 |
|---|---|
| 動機・文脈を深掘りしたい | ユーザーインタビュー |
| 実際の環境で行動を見たい | フィールドスタディ |
| 行動と意図を同時に理解したい | コンテキスチュアルインクワイアリ |
| 継続的な変化を追いたい | 日記調査 |
「どれくらい」を知りたい → 定量手法
| 状況 | 手法 |
|---|---|
| 課題の規模感を把握したい | サーベイ |
| 行動データを継続追跡したい | アクセス解析 |
| 改善案の効果を検証したい | A/Bテスト |
| ロイヤルティを測定したい | NPS |
「使えるか」を検証したい → 評価手法
| 状況 | 手法 |
|---|---|
| 操作の問題を発見したい | ユーザビリティテスト |
| ナビゲーション構造を検証したい | ツリーテスト |
| ユーザビリティを数値化したい | SUS |
情報設計をしたい → 構造化手法
| 状況 | 手法 |
|---|---|
| カテゴリ構造を発見したい | カードソート |
| 既存構造を検証したい | ツリーテスト |
5. よくある失敗と対策
「目的が広すぎる」
失敗: 「ユーザーのことを知りたい」
対策: 「知った結果、何を判断するか」まで明確にする
「仮説がない」
失敗: 何の予想もなくリサーチに臨む
対策: 「おそらく○○だろう」という仮説を持つ。仮説が覆されることも発見。
「手法から始める」
失敗: 「インタビューをやりたい」から始まる
対策: 目的を先に決め、目的に合った手法を選ぶ
「ステークホルダーを巻き込まない」
失敗: リサーチャーだけで計画・実施し、結果を報告するだけ
対策: 計画段階から意思決定者を巻き込む。可能なら調査に同席してもらう。
6. 実務チェックリスト
計画時
実施前
7. 関連リンク
UXリサーチの基礎
代表的な手法
関連する用語
まとめ
リサーチ計画はリサーチの成否を決める最重要ステップである。「何を知りたいか」「知った結果、何を判断するか」を明確にし、目的に合った手法を選ぶ。計画がないリサーチは、時間とリソースの無駄になる。目的 → 仮説 → 手法 → スケジュール——この順序で計画を立て、ステークホルダーを巻き込んで実施する。