「このUIは使いやすいですか?」——この質問に、どう答えればいいのか。
「使いやすい」は主観的だ。Aさんにとって使いやすいUIが、Bさんには使いにくいかもしれない。「使いやすさ」を数値化しないと、改善の前後比較も、競合との比較もできない。
SUSは1986年から使われ続けている標準的なユーザビリティ評価指標だ。10項目の質問に答えるだけで、0〜100のスコアが出る。シンプルで、信頼性が高く、ベンチマークとの比較ができる。
1. 手法の定義
10項目の標準化された質問票で、システムの主観的ユーザビリティを定量評価する指標。
ユーザビリティテストの後に実施することが多い。0〜100のスコアで評価され、68点が平均的なユーザビリティとされる。
2. いつ使うか
適している場面
- ユーザビリティを数値で把握したい: 主観的な印象を定量化
- 改善の前後を比較したい: リデザイン前後でスコア比較
- 競合と比較したい: 業界ベンチマークとの比較
- ユーザビリティテストの補足として: 行動観察と主観評価を組み合わせる
向いていない場面
- 「なぜ」を知りたい時: → ユーザビリティテスト
- 特定機能の評価: SUSはシステム全体の評価
- 非インタラクティブなコンテンツ: SUSは「システム」向け
3. 設計判断の核
SUSは「絶対評価」ではない。「相対評価」のための指標である。
よくある誤解
SUSが70点なら「良い」、50点なら「悪い」。
実際
SUSスコアは単独では解釈しにくい。重要なのは比較だ。改善前と後、競合製品と、業界平均と比較することで意味が出る。68点が「平均」とされるが、これは多くの製品のデータから導かれた相対的な基準。
設計判断の基準
- 「何と比較しているか?」→ 改善前、競合、業界平均
- 「ユーザビリティテストと組み合わせているか?」→ 数値だけでは改善点がわからない
- 「同じ条件で測定しているか?」→ 比較するなら条件を揃える
4. 調査タイプ
| 軸 | 内容 |
|---|---|
| データ | 定量 |
| 対象 | 態度(主観的評価) |
| サンプル | 12人以上(信頼性確保) |
| 実施フェーズ | Design / Deliver |
手法のポジション
深さ(Why)
↑
ユーザビリティテスト
↑
SUS ← ここ(主観的評価を数値化)
↑
NPS
→ 規模(How many)
SUSはユーザビリティの主観的評価を数値化する。行動を観察するユーザビリティテストと組み合わせることで、客観と主観の両面から評価できる。SUSは「使いやすさ」の主観評価を標準化して比較するための指標であり、ロイヤルティを測るNPSや満足度を測るCSATとは目的が異なる。
補足: SUSで得られるのは「態度(主観的評価)」。実際の操作で問題があったかどうかは、ユーザビリティテストで観察する必要がある。
5. 実施プロセス
1. 実施タイミング
- ユーザビリティテストの直後: タスク完了後に回答
- 製品使用後: 実際に使った後に回答
- 比較調査: 複数製品を使った後にそれぞれ回答
2. 質問項目(10問)
SUSは以下の10問で構成される(1: 全くそう思わない 〜 5: 強くそう思う)
- このシステムを頻繁に使いたいと思う
- このシステムは不必要に複雑だと思った
- このシステムは使いやすいと思った
- このシステムを使うには、技術者のサポートが必要だと思った
- このシステムの様々な機能はよく統合されていると思った
- このシステムには一貫性がないと思った
- ほとんどの人がこのシステムの使い方をすぐに学べると思う
- このシステムはとても使いにくいと思った
- このシステムを使うことに自信を感じた
- このシステムを使い始める前に、多くのことを学ぶ必要があった
※ 奇数問は肯定的、偶数問は否定的な表現
3. スコア計算
- 奇数問(1,3,5,7,9): 回答値 − 1
- 偶数問(2,4,6,8,10): 5 − 回答値
- 合計を2.5倍 → 0〜100のスコア
4. 解釈
| スコア | 評価 | グレード |
|---|---|---|
| 85以上 | 非常に良い | A |
| 72-84 | 良い | B |
| 68 | 平均 | C |
| 51-67 | 改善の余地あり | D |
| 50以下 | 要改善 | F |
6. 実務チェックリスト
最低ライン(Must - これがないと失敗)
理想ライン(Better - プロの品質)
7. 関連リンク
関連するUXリサーチ手法
- ユーザビリティテスト — 行動を観察する
- NPS — ロイヤルティを測定
- CSAT — 満足度を測定
関連するUX心理
関連する用語
まとめ
SUSは「絶対評価」ではない。「相対評価」のための指標である。改善前後、競合、業界平均との比較で意味が出る。10問という手軽さで、主観的ユーザビリティを数値化できる。ユーザビリティテストで「何が問題か」を発見し、SUSで「どれくらい改善したか」を測定する——これがユーザビリティ評価の基本サイクルだ。