この記事の要点
- 「ユーザビリティテスト」という同じ言葉で、実際の人に使ってもらう調査と、人を呼ばずに画面を見る評価の両方が売られています。どちらを頼むのかを先に決めないと、見積もりは比べられません
- 依頼先は5種類あります。それぞれ向く場面が違い、あなたの状況によっては外注しないほうが早い場合もあります
- 見積もりの金額をいちばん大きく動かすのは、被験者の人数と条件、そして被験者を誰が集めるかです
作りかけの画面があって、これで出していいのか自信が持てない。社内で見せ合っても意見が割れる。そこで外に頼もうと思って調べ始めると、今度はどこに頼めばいいのかが分からない、という段階でつまずきます。
会社によって金額が10倍近く違うこともあります。安いところが手を抜いているとも限りません。同じ言葉で、違うものを売っているからです。
この記事は、依頼先を決めるところまでを扱います。
まず、頼もうとしているものを1つに決める
依頼先を比べる前に、自分が買おうとしているものを決めます。混ざりやすいのは次の3つです。
| 頼めるもの | 何をするか | 答えが出る問い |
|---|---|---|
| ユーザビリティテスト | 実際の人に画面を触ってもらい、詰まった場所を観察する | 作ったものを、人は使えるか |
| 専門家レビュー | 人を呼ばず、詳しい人が画面を見て問題を挙げる | 直す場所の当たりはどこか |
| ユーザーインタビュー | 使ってもらわず、話を聞く | そもそも何が必要か |
いちばん大きな分かれ目は、実際の人を呼ぶかどうかです。人を呼ぶ場合、条件に合う人を集める作業が必要になり、そこに費用と日数がかかります。人を呼ばない場合は安く早く済みますが、実際の人が詰まるかどうかは分かりません。
判断の材料をもう少し細かくすると、こうなります。
- 触れる画面がすでにある、かつ使えるかを知りたい:ユーザビリティテスト、または専門家レビュー
- 社内を説得する材料が要る(作り直しの判断、予算の判断):実際の人が必要なので、ユーザビリティテスト
- 今週中に直す場所を知りたい:人を呼ばない専門家レビューのほうが早く済みます
- まだ作っていない、方向を決めたい:ユーザーインタビュー や コンセプトテスト の担当範囲です
ユーザビリティテストそのものが何をする調査なのかは、ユーザビリティテストとは何か にまとめてあります。人を呼ばない評価のやり方は ヒューリスティック評価 が近いものです。
ここが決まっていない状態で見積もりを取ると、各社が別々の解釈で見積もったものが返ってきます。 金額の差の大部分は、この解釈の差です。
依頼先の5つの種類
頼もうとしているものが決まったら、依頼先を選びます。5つあります。
| 依頼先 | 向く場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| UXリサーチの専門会社 | 判断が重い。社外の目で出した結果が要る | 被験者集めに数週間かかる。急ぎには向かない |
| 作った制作会社・デザイン会社 | 直すところまで一気に進めたい | 設計の前提そのものへの指摘は出にくい |
| フリーランス | 対象が1画面から数画面。早く動きたい | 守備範囲が人によって大きく違う |
| セルフサービスのツール | 社内に手を動かせる人がいる。何度も回したい | 設計を間違えると、間違った結論が速く出る |
| 人を呼ばない専門家レビュー | 安く早く、直す場所の当たりを付けたい | 実際の人が詰まるかは分からない |
UXリサーチの専門会社
調査の設計、被験者集め、実査、分析、報告までを通しで引き受けます。条件を絞った人(特定の職種、特定のサービスの利用経験者など)を集める手段を持っているところが多く、そこがいちばんの価値です。
向くのは、判断が重い場面です。作り直すかどうかを決める、大きな予算を付けるかどうかを決める。こうした場面では、社外の目で出した結果があるかどうかで社内の話の進み方が変わります。
気をつけるのは日数です。条件に合う人を集める工程だけで2週間から4週間かかることがあります。来週までに何か言ってほしい、という状況には向きません。
作った制作会社・デザイン会社に頼む
その画面を作った先に、そのまま検証も頼む形です。画面の事情を知っているので説明が短くて済み、見つかった問題を直すところまで続けて頼めます。
気をつけるのは、自分が作ったものを自分で評価することになる点です。ボタンの位置や文言といった細かい調整への指摘は出ますが、そもそもこの画面構成でよかったのかという前提への指摘は出にくくなります。作った側にとっては、自分の判断を否定することになるからです。
作りの方向自体を確かめたいなら、作った先とは別のところに頼むほうが確実です。逆に、方向は固まっていて仕上げの精度を上げたいなら、作った先に頼むのが速い選択です。
フリーランス(個人のUXリサーチャー、デザイナー)
単価が下がり、動き出しが速くなります。対象が1画面から数画面で、来週には何か言ってほしい、という規模に合います。
気をつけるのは、守備範囲が人によって大きく違うことです。調査の設計と分析は得意でも、被験者を集める工程は個人では回りにくく、そこはあなたの側で用意することになる場合があります。決める前に、過去に書いた報告書の実物を1本見せてもらってください。書式の好みではなく、指摘に根拠が書いてあるかを見ます。
セルフサービスのテストツール
Maze、UserTesting、Lookback のようなツールを契約して、テストの設計と実施を自分たちで行う形です。人に頼むのではなく、道具を借ります。
向くのは、社内に手を動かせる人がいて、何度も回したい場合です。1回あたりの費用が下がるので、直すたびに確かめる進め方ができます。
気をつけることが2つあります。1つは、日本語を話す被験者の登録数がツールによって差があることです。もう1つは、テストの設計を間違えたときに、間違った結論が速く出てしまうことです。設問の作り方は 調査の計画 に整理してあります。
人を呼ばない専門家レビュー
実際の利用者を呼ばず、詳しい人が画面を見て問題を挙げる形です。ヒューリスティック評価やエキスパートレビューと呼ばれます。人集めの工程が丸ごと無くなるので、費用も日数も下がります。
向くのは、テストの前に明らかな問題を潰しておきたい場面です。実際の人を呼ぶ調査は1回が高いので、誰が見ても分かる問題が残ったまま実施すると、その指摘で枠が埋まってしまいます。
気をつけるのは、実際の人が詰まるかどうかは分からないことです。評価する人の経験に寄りかかるので、「この人はこう思う」の域を出ないものも混ざります。依頼するときは、何を基準に見るのかを先に示してもらってください。 基準が出てこない場合、返ってくるのは感想文になりがちです。
頼む前に用意しておくもの
見積もりが出てこない、あるいは各社からばらばらの前提のものが返ってくる原因は、たいてい依頼する側の情報が足りていないことにあります。次の7つを先に決めておくと、そのまま依頼文になります。
| 決めること | 決まっていないと何が起きるか |
|---|---|
| 対象の画面と、その数 | 「アプリ全体」では見積もれない |
| 使ってもらう人の条件 | 金額がいちばん動く項目なので、各社が別々に仮置きする |
| この調査で何を判断したいか | 報告書は届くが、決めたかったことが決まらない |
| 報告が必要な日 | 人集めが間に合うかどうかを先方が判断できない |
| 触れる状態 | 本番、テスト環境、クリックできる試作、静止画で方法が変わる |
| 外に出していい情報の範囲 | 秘密保持契約や、画面に本物のデータが出るかの確認で止まる |
| 報告を受けたあと、誰が直すか | 報告書が読まれずに終わる |
3つめの「何を判断したいか」は、書き方で結果が変わります。「使いやすくしたい」では判断できません。 「この申し込みフォームを、いまの形のまま公開していいかを決めたい」のように、その調査が終わったときに何が決まっていてほしいかを書きます。
7つめは見落としやすいところです。報告書は、それ自体では何も直しません。受け取ったあとに手を動かす人と時間が確保できていないなら、調査の日程を後ろにずらすほうが結果的に早く進みます。
見積もりの見方
返ってきた見積もりを比べます。金額を動かす要因を、影響の大きい順に並べます。
- 被験者の人数と条件(いちばん大きい)
- 被験者を誰が集めるか(あなたの会社の既存顧客に声をかけられるなら下がる)
- 実施の形式(対面、遠隔、録画のみで下がる)
- 分析と報告の深さ(録画の書き起こし、指摘の一覧、報告会の有無)
- 直しの提案まで含むか
- 直したあとの再確認を含むか
比べられる形にするには、同じ1枚の依頼文を各社に送ります。 前の章の7項目が書いてあれば足ります。返ってきたものは、金額の前に次の4つを並べます。
- 被験者は何人か
- その人たちを誰が集めるか
- 何が納品されるか(報告書だけか、録画も付くか、報告会があるか)
- 着手から報告までの日数
この4つが違うものを、金額だけで比べることはできません。 安い見積もりを見たときに確かめるのは、この4つのどれが違うのかです。人数が少ないのか、被験者集めがこちらの担当になっているのか、あるいは実際の人を呼ばない専門家レビューに置き換わっているのか。安いこと自体は問題ではなく、別のものを見積もっている可能性があるというだけです。
外注では買えないもの
依頼する前に、届かないものも見ておきます。ここを期待していると、報告書を受け取ったときに「思っていたものと違う」になります。
- 直す作業。 報告書は問題の場所を示しますが、直すのはあなたの側です。設計や実装まで含めたい場合は、その範囲を最初に見積もりへ入れてもらいます
- 割合の数字。 5人から8人のテストで「利用者の何割が離脱する」は出せません。人数が足りないためです。割合が要るなら アクセス解析 やアンケートなど、別の調べ方になります
- 何を作るべきかの答え。 ユーザビリティテストが扱うのは「作ったものを使えるか」です。「そもそも欲しいか」は別の調べ方の担当です
- 社内の合意そのもの。 結果は材料になりますが、決めるのはあなたの会社です
- 良いデザインというお墨付き。 出てくるのは、どこで詰まったかという事実です
人を呼ばずに、画面だけを見てもらう場合
最後に、UIXHERO が関わっている選択肢を1つ置いておきます。前の章の5番目、人を呼ばない専門家レビューに当たるものです。
Design QA は、1つの画面を6つの観点で見て、出していいかどうかを3段階で判定する仕組みです。実際の利用者には使ってもらいません。 人が実際にどこで詰まるかを知りたい場合は、この記事の1番目から4番目のほうを選んでください。
専門家レビューを頼むときに確かめるところとして「何を基準に見るのかを先に示してもらう」と書きました。Design QA では、その基準を6観点62項目として全部公開しています。観点ごとに何を見るのかは UI検品の6観点 で1つずつ説明しています。頼まずに自分の画面へ当てることもできます。
料金と申し込みは design-qa.com(design-qa.com を新しいタブで開く) で扱っています。
この記事は、UIXHEROがAI(Claude)と協働で制作しています。構成の判断と公開前の事実確認は人間が行い、下書き執筆はAIが担っています。
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