#532
心理学・認知バイアス
#532かいこばいあす
回顧バイアス
別名・表記:Recall Bias想起バイアスリコールバイアス
UIXHERO Definition
UIXHEROでは、回顧バイアスを「過去の出来事を思い出して答える時に、記憶が現在の状態や印象に引きずられて歪む現象」と定義する。
概要
人は過去を録画のように再生しているわけではなく、そのつど再構成している。再構成の材料には現在の気分、直近の出来事、思い出しやすさが含まれるため、同じ出来事でも尋ねる時点によって語られ方が変わる。
ピーク・エンドの法則が示すように、体験全体の評価は最も強い瞬間と終わり方に大きく影響される。途中の平坦な時間は、記憶にほとんど残らない。
UXでの活用
- 手法の選択: 頻度や気分を扱うなら、回顧的インタビューより日記調査や経験サンプリング法のほうが歪みが小さい。
- 設問の具体化: 「普段どのくらい」より「直近1週間で」のほうが誤差は小さい。さらに「昨日は何をしましたか」と限定すると精度が上がる。
- ログとの突き合わせ: 申告値と実測値を比較すると、どの方向にどれだけずれるかが把握できる。
誤用・混乱
- 回答者を疑う話ではない: 「ユーザーは嘘をつく」という言い方は誤解を招く。本人にとっては正直な回答である。
- バイアスは除去できない: 軽減はできても消えない。得られた数値を「本人の認識」として扱い、行動データと区別して扱う。
- すべての回顧が無意味ではない: 何が印象に残ったかを知りたい場合、回顧そのものが対象になる。目的次第で扱いが変わる。
💡 使いどころ
「先週どうでしたか」「普段どのくらい使いますか」といった回顧型の設問を設計する時。得られた回答をどこまで事実として扱うかを判断する時。
⚠️ 注意点・誤用
回顧バイアスは回答者の不誠実さではなく、記憶の仕組みに由来する。丁寧に聞けば防げるものではないため、設問設計や手法選択で回避するほうが確実である。
具体例
- 「1か月の利用回数」を尋ねると、実際のログより多めに申告されやすい
- 直近で不満な出来事があると、過去の評価まで低く語られる
- 印象的な失敗体験が、実際より頻繁に起きたように語られる
出典・参考文献:
- Thinking, Fast and Slow (Daniel Kahneman)
- Experience Sampling Method (Mihaly Csikszentmihalyi, Reed Larson)