UIXHERO
#517
ユーザー理解・リサーチ
#517

けいけんさんぷりんぐほう

経験サンプリング法

別名・表記:Experience Sampling MethodESMエクスペリエンスサンプリングEcological Momentary Assessment

UIXHERO Definition

UIXHEROでは、経験サンプリング法を「調査側のタイミングで通知を送り、その瞬間の状況・行動・気分をその場で回答してもらう調査手法」と定義する。

概要

経験サンプリング法は、心理学の分野でフローや情動の研究のために用いられてきた手法である。「今この瞬間」を尋ねる点で、1日の終わりや週末にまとめて振り返る日記調査とは性質が異なる。

通知のかけ方には主に3種類ある。

  • ランダム型: 決められた時間帯の中でランダムに通知する。日常の平均的な状態を捉えたい時に使う。
  • イベント型: 特定の行動が起きたら回答してもらう。頻度の低い行動を狙う時に使う。
  • 間隔型: 一定時刻に通知する。日内変動を見たい時に使う。

UXでの活用

  • 利用文脈の把握: 「どこで、何をしながら使っているか」は、ラボでのユーザビリティテストでは決して得られない。
  • 日記調査の補強: 日記調査の自由記述と組み合わせると、頻度と深さの両方を得やすい。
  • 仮説の検証: 「通勤中に使われているはず」といった前提を、実際の時刻・場所データで確かめられる。

誤用・混乱

  • 回顧バイアスがゼロになるわけではない: 「今」を聞いていても、通知に気づいてから回答するまでのタイムラグはある。
  • 通知の介入効果: 頻繁に「集中していますか」と聞かれること自体が集中を妨げる。設問数と頻度は最小限にする。
  • 少数サンプルの数値化に注意: 回答数は多く見えるが、参加者数は少ないことが多い。回答件数を母数として統計処理すると、個人差を人数分の情報として誤って扱うことになる。

💡 使いどころ

後から思い出して答えてもらうと歪む対象(気分、疲労、集中、その場の状況)を扱う時。日記調査で回答が「まとめ書き」になってしまう場合の代替・補完として使う。

⚠️ 注意点・誤用

通知そのものが対象者の行動や気分に影響する。また回答負荷が高いため、期間が長いほど回答率が下がり、後半のデータほど脱落者に偏る。1回の設問は数問に絞る必要がある。

具体例

  • 1日5回ランダムな時刻に通知し、その時何をしていたか・集中できていたかを回答してもらう
  • アプリ起動直後にその日の状況を1問だけ尋ねる
  • 業務システムの利用ログを起点に、操作直後の困り度を聞く
出典・参考文献:
  • Experience Sampling Method (Mihaly Csikszentmihalyi, Reed Larson)
  • Diary Studies に関する Nielsen Norman Group の解説記事
作成: 2026年7月29日

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