0. 冒頭(問題提起)
「このメニュー構造、ユーザーにはわかりにくいらしい」——でも、どう直せばいいのかわからない。
開発者が「技術的に似ている」と思う機能同士が、ユーザーにとっては「全然違う」と分類されることは珍しくありません。 ユーザーの頭の中の「引き出し」 を知らずに作ったナビゲーションは、必ず迷子を生みます。
この記事でわかること
- カードソートの定義と2つの種類(オープン・クローズド)
- 実施手順とカードの設計方法
- 結果の分析方法(類似度マトリクス・デンドログラム)
- ナビゲーション設計への接続
1. カードソートとは(定義)
カードソート(Card Sorting)とは、 情報(コンテンツ)が書かれたカードをユーザーにグループ分けしてもらい、ユーザーにとって自然な分類や構造を探る定性調査手法 です。
サイトのカテゴリ分けやナビゲーション構造を「設計者の論理」ではなく「ユーザーの認知」に基づいて設計するために行います。
2. 2つの種類(オープン vs クローズド)
| 種類 | 説明 | 適用場面 |
|---|---|---|
| オープン・カードソート | ユーザーが自由にグループを作り、自由にグループ名を付ける | 新規サイト設計、既存構造のゼロベース見直し |
| クローズド・カードソート | あらかじめ決められたカテゴリにカードを振り分ける | 既存カテゴリの検証、リニューアル前の確認 |
オープン・カードソートの特徴
- 発見志向 : ユーザーの分類基準そのものを発見できる
- 結果がバラバラになりやすい : 分類基準(機能別・目的別・対象者別など)が人によって異なる
- ラベルの発見 : ユーザーが付けたグループ名は、そのままメニュー名の候補になる
クローズド・カードソートの特徴
- 検証志向 : 設計者が考えたカテゴリが妥当か確認できる
- 結果が比較しやすい : 同じカテゴリへの振り分け率を数値化できる
- 迷いの発見 : どのカテゴリにも入れにくい「浮遊カード」が見つかる
3. いつ使うか(適用場面)
特に重要になるケース
- 新規サイト・アプリの情報設計 : ゼロベースでカテゴリ構造を決める
- 「メニューがわかりにくい」という声が上がった時 : 既存構造の問題点を特定
- 大規模なコンテンツ移行・統合 : 複数サイトを1つにまとめる際の分類基準
- 専門用語が多いサービス : ユーザーの語彙と設計者の語彙のギャップ発見
避けるべき状況
- コンテンツが少ない時 : カード数が20枚未満だとグループ化の意味が薄い
- すでにユーザー行動データがある時 : ログ分析で傾向が見える場合は、まず現状把握を優先し、その後にカードソートで構造を検証
- タスクフローの検証 : 「どの順序で操作するか」はユーザビリティテストで確認
4. 具体の設計ルール(チェックリスト)
最低ライン(Must)
理想ライン(Better)
5. 実施手順(ステップバイステップ)
STEP 1: カードの準備
カードに書く内容のルール:
| ❌ 悪い例 | ✅ 良い例 |
|---|---|
| 設定 | パスワードを変更する |
| ヘルプ | よくある質問を見る |
| 商品 | 新着商品を見る |
抽象的なラベルではなく、 ユーザーが実際に行うタスク ** や 具体的なコンテンツ**を書きます。
STEP 2: 参加者のリクルーティング
- ターゲットユーザーに近い人 : 専門知識の有無で分類が変わる
- 15〜20人 : オンラインツールなら30人以上も可能
- 所要時間 : 対面30〜45分、オンライン15〜20分
STEP 3: セッションの実施
オープン・カードソートの進め方:
- 「このカードを、自分がわかりやすいと思うグループに分けてください」
- 「グループができたら、それぞれにグループ名を付けてください」
- 「なぜそのカードをそのグループに入れたか、教えてください」
クローズド・カードソートの進め方:
- 「このカテゴリ(親グループ)の中で、最もふさわしい場所にカードを入れてください」
- 「どこにも入れにくいカードがあれば、『不明』に置いてください」
- 「迷ったカードについて、なぜ迷ったか教えてください」
STEP 4: 結果の分析
類似度マトリクス
「カードAとカードBを同じグループに入れた人の割合」をマトリクス化。
カードA カードB カードC
カードA - 80% 20%
カードB 80% - 15%
カードC 20% 15% -
80%以上で同じグループに入れられたカード同士は、同じカテゴリに配置すべきです。
デンドログラム(樹形図)
クラスター分析を行い、自然なグループの境界を可視化します。Optimal Workshopなどのツールで自動生成可能。
STEP 5: ナビゲーション設計への接続
- カテゴリ名の決定 : ユーザーが付けたグループ名から選ぶ
- 階層構造の決定 : デンドログラムの分岐点を参考に
- 浮遊カードの処理 : どのカテゴリにも入りにくいものは「その他」ではなく、UI上で複数の場所に配置
6. よくある失敗パターン
❌ 抽象的なカード
「設定」「ヘルプ」のような抽象的なラベルは、分類基準がブレやすい。具体的なタスク・コンテンツを書くこと。
❌ 参加者が少なすぎる
5人程度では偏りが大きく、一般化できない。最低15人は必要。
❌ 結果を「多数決」で決める
60%が「A」に入れて、40%が「B」に入れたカードを「Aに決定」とするのは危険。 40%の迷い が存在するという事実を重視し、UI上で両方からアクセスできるようにする。
7. おすすめツール
| ツール | 特徴 | 料金 |
|---|---|---|
| Optimal Workshop | カードソート特化、デンドログラム自動生成 | 無料プランあり |
| UserZoom | リモートテスト総合 | 有料 |
| Maze | プロトタイプテストと統合 | 無料プランあり |
| Miro | 対面セッション用 | 無料プランあり |
| 付箋 | 最もシンプル | 無料 |
8. テンプレート
カード作成ルール
【良いカードの例】
✅ パスワードを変更する
✅ 注文履歴を確認する
✅ 新着商品を見る
✅ カード情報を追加する
【悪いカードの例】
❌ 設定(抽象的すぎる)
❌ ヘルプ(抽象的すぎる)
❌ マイページ(範囲が広すぎる)
結果記録テンプレート
【参加者】P1
【グループ1】「買い物」(参加者が付けた名前)
- 新着商品を見る
- 注文履歴を確認する
- カートを見る
【グループ2】「アカウント」
- パスワードを変更する
- カード情報を追加する
- 住所を変更する
【迷ったカード】
- 「お気に入り」→ 買い物?アカウント?
【理由メモ】
「買うときに使うものをまとめた」
9. 関連リンク
- 関連リファレンス(理論) : メンタルモデル、認知負荷
- 用語集(定義) : カードソーティング、情報アーキテクチャ、サイトマップ、メンタルモデル
- 関連するUXリサーチ手法 : ユーザビリティテスト完全ガイド、ユーザーインタビュー完全ガイド
- UXリサーチ入口 : UXリサーチ完全ガイド
10. まとめ
今日から直せる一手
次にナビゲーションで悩んだら、付箋にコンテンツ名を書いて、同僚5人に「わかりやすいように分けて」と頼んでみてください。10分で「設計者とユーザーの認知ギャップ」が見えます。
チームに共有するなら一言
「ユーザーの頭の中の引き出しは、設計者の引き出しとは違う」——カードソートは、その違いを可視化する最も簡単な方法です。
UXデザインを体系的に学ぶ
UXリサーチの手法を理解したら、次は「UI原則」と「UIコンポーネント」も学ぼう。
- UIデザイン完全ガイド — UX心理・UI原則・UIコンポーネントの3レイヤーを一本化
- UIデザイン原則まとめ — 心理法則をUI設計のルールへ翻訳する65原則
- UX心理学まとめ — UIデザインの「なぜ」を説明する119法則
カードソートとは、ユーザーに情報をグループ分けしてもらい、自然な分類構造を探る定性調査手法です。