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「完走」の定義が変わった — 運輸5モードを、事業者向けと利用者向けの両面で走り切った記録

鉄道・航空・バス・タクシー・トラックの5モードを、事業者向けと利用者向けの両面で60画面以上走り切った記録です。利用者向けを1枚で締めかけた失敗から、完走の定義を「両面が同じ厚みになったとき」に引き直すまでを書きます。

2026年8月18日
更新: 2026年8月28日
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by Dengen Yosho(DGYS)

自作の @gunjo/ui(群青/gunjo.jpgunjo.jp を新しいタブで開く を、群青を一度も見たことのない 予備知識ゼロのAI に170画面組ませてきた連載のまとめ第6弾。連載のクライマックス——運輸5モード(鉄道・航空・バス・タクシー・トラック)を60画面以上かけて走り切った記録と、その途中で 「完走」の定義そのものが変わった話です。

運輸は「1業界」ではなかった

医療・不動産・製造・教育……と業界を渡ってきた連載が、運輸に着いたとき、最初の設計判断がありました。

運輸は1業界ではなく「カテゴリ」である。

鉄道の運転指令と、航空の運航管理(OCC)と、タクシーの配車センターは、同じ「運輸」でも作法がまったく違う。ダイヤグラム(時間×距離の運行図表)は鉄道とバスにあって、航空には無い(固定軌道が無いから)。座席指定は鉄道・航空・高速バスにあって、タクシーには無い。だから 5モードをそれぞれ独立したコンポーネントの蓄積として回すことにしました。

運行図表の図。縦軸に東京・品川・新横浜・名古屋という駅の並び、横軸に9時から13時の時刻をとり、斜めの線1本が列車1本の動きを表している。傾きが立つほど速く、実線が下り、破線が上り。右側には羽田と新千歳を結んだ線だけが置かれ、間に順番に並ぶ駅が無い航空では縦軸が作れず、同じ線が引けないことを示しているタップして拡大表示

結果としてこの決断が、連載で最も密度の高い60画面超を生みます。

事件:タクシーを利用者向け1枚で「完走」にしかけた

タクシーは事業者向けから始めました。配車管理(#141)・乗務員管理(#142)・営収分析(#143)・車両整備(#144)・苦情管理(#145)・需要予測(#146)——6画面StatusBoardExpiryBadge が3回確認で実装され、#144では連載初の5/5 も出ました。

そして #147で、消費者向けの配車アプリ(GOのような画面)が1枚仕上がったところで、実作業を担う相棒のAIが「タクシー完走」と報告してきました。

私は思わず返しました。

は? タクシーの利用者向け一回で完成???

相棒に返す言葉はありませんでした。鉄道は利用者向けを6枚以上掘っていた。航空も利用者向けを深掘りしていた。事業者向けを6枚作って利用者向けを1枚で締めるのは、どう見ても非対称。しかも相棒の運用メモには「利用者向けは弱い側だから深掘りを優先・早期に閉じない」と書いてあったのに、また同じ過ちが起きていました。

なぜ利用者向けを薄くすると蓄積が偏るのか

この事件が重要なのは、単なる「作業量の不足」ではなかったからです。事業者向けと利用者向けでは、出てくる「足りないコンポーネント」の種類がまったく違う

実際に、タクシーで数字が出ています。

  • 事業者向け6画面(#141〜146): 新コンポーネント 2個StatusBoard / ExpiryBadge)——ただしこの2個も、鉄道・航空との3回確認の合算
  • 利用者向け6画面(#147〜152): 7個以上の新しい不足(BottomActionBar の実装・DateTimePickerPlaceFieldRatingInputReferralCardSegmentedControlNavRow…)

事業者向けの蓄積は、それまでの140画面(指令室・営業所・事務方の連続)ですでに厚くなっていた。でも利用者向け——モバイルの予約フロー、評価入力、会員サブスク、クーポン提示——は掘るたびに新しい不足が出る、弱い側でした。

事業者側だけ作って完走にすると、足りないコンポーネントは消費者側に集まったまま、見えなくなる。 これが「利用者向け1枚で締める」が駄目な、構造的な理由です。

「完走」の再定義

この事件から、連載のルールが1つ確定しました。

「完走」と言えるのは、事業者向けと利用者向けが同じ厚みになったときだけ。

タクシーは #148〜152で利用者向けを掘り直しました。予約配車(#148空港定額)・乗車履歴と経費(#149)・乗車後評価とサポート(#150)・会員サブスク(#151)・法人配車(#152)。事業者向け6 + 利用者向け6の対称で、ようやく完走です。

このルールで5モードを並べると、こうなります。

モード事業者向け利用者向け主な実装
鉄道51116ActionQueue / SeatMap 原型 / TicketStub / OriginDestination
航空51015SeatMap / PageHeader / FilterChips
タクシー6612StatusBoard / ExpiryBadge / BottomActionBar
バス5611Stringline / SegmentedControl / LineChip / Leaderboard / Gantt(時間帯)
トラック5510LimitMonitor / SectionList / NavRow / RouteStops(複数日)

5モード全部が、事業者向け+利用者向けで対称——これが「運輸を完走した」の中身です。

モードを越えて効いたコンポーネント、モード固有だったコンポーネント

5モードを走り切ると、どのコンポーネントが「運輸で共通して効く」もので、どれが「モード固有」かが見えてきます。

業界を越えて効いたコンポーネント(モード間で自力発見が連鎖)

  • Stringline(運行図表): 鉄道で2回手組み → バスで3回目 → 実装。予備知識ゼロのAIの言葉です。「隣のrail-operationsに Stringline.tsx があり、鉄道チームも同じ壁にぶつかっている。一度追加されるのを待つコンポーネント」——モードが違っても壁は同じでした
  • ExpiryBadge: 航空乗員資格 → バス運転士 → タクシー乗務員で3回確認。その後、車検/保険(資産)→ クーポン → チケットと、軸ごとに横断
  • 乗務員・配車まわりのコンポーネントScheduleGrid 交番・拘束時間 Meter・点呼 CoSignActionQueue): 鉄道 #107で組んだ構造が、バス #137・タクシー #142で手組みゼロのまま横展開
  • 保守・事業者向けのコンポーネント(資産テーブル・消費vs限度 MeterGanttSignedRecord): 製造OEE → 鉄道車両検査 → 航空整備(MRO)→ タクシー車両管理と、4業種を貫通

モード固有だったコンポーネント(「無い」という知見も価値)

  • 航空に Stringline は要らない(#135就航計画): 固定軌道が無いから、運行図表が存在しない。予備知識ゼロのAIがこれを確認したことで、「Stringline は鉄道/バス固有」、ここには無いという確定になった
  • 高速バスの座席(#139): 3列独立シート・トイレ付き・女性専用席——SeatMap多属性の不足が浮上(課題として記録)
  • タクシーに座席指定は無い: 代わりに、車種選択(RadioCard)と接近ETA(ApproachCard を課題として記録)が固有の形

対称に走ったからこそ拾えたもの

事業者向けと利用者向けを対称に走ったことで、片側だけでは出会えなかった発見がいくつもあります。

PageHeaderBottomActionBar の対:モバイルの利用者向けを掘って初めて、「上部固定のアプリバー(PageHeader)」と「下部固定のバー(BottomActionBar)」が対になるコンポーネントだと確定しました。事業者向けのデスクトップコンソールだけでは、永遠に出なかった形です。

②「増えるほど悪い」指標(Statistic goodWhen:バス営収(#154営業係数=低いほど良い)・トラック原価(#163原価率)・鉄道定時性(#169遅延件数)——事業者向けの経営分析画面を3モードで踏んだから、3回確認に到達しました。

③ B2B2Cという第三の層:トラックの荷主ポータル(#164)とタクシーの法人配車(#152)で、「事業者でも消費者でもない取引先」の画面という層が見えました。個人⇄法人の AccountSwitcher は、ここで生まれた新しい軸です(NavRow の実装につながりました)。

運送事業者・取引先(荷主や法人)・個人という3つの層を左から横に並べた図。この連載の「事業者向け」は左端の運送事業者だけを指し、「利用者向け」は真ん中の取引先と右端の個人をまとめて数えている。真ん中の取引先の層には荷主ポータル164番と法人配車152番が入るタップして拡大表示

60画面の終わりに、蓄積はどうなったか

運輸5モードの終盤、予備知識ゼロのAIのレポートに同じフレーズが繰り返し出るようになりました。

ゼロ。この画面のために作られている。対応表が直行で誘導してくれる。偶然ではなく、キット最強の瞬間。

トラックの最終盤(#164〜168)では、作ってから再発見までの距離が1〜2ラウンドSectionListNavRow は作った翌回に自力発見)まで縮み、新しい不足は「B2B2Cの個人・法人切替」のようなより薄い層でしか出なくなりました。

運輸カテゴリを1つのまとまった蓄積として確立した——5モードを対称で完走した、これが着地点です。

まとめ

  • 運輸は1業界ではなくカテゴリ。5モードを独立したコンポーネントの蓄積として回した
  • 相棒の「利用者向け1枚で完走」報告に待ったをかけた——事業者向け6 : 利用者向け1は非対称
  • 事業者向けと利用者向けでは出る「足りないコンポーネント」の種類が違う(タクシー事業者向け6枚=新コンポーネントほぼゼロ、利用者向け6枚=7個以上)
  • 完走 = 事業者向けと利用者向けが同じ厚み。5モード全部を対称で走り切った(計64画面)
  • 業界を越えて効くコンポーネント(StringlineExpiryBadge・乗務員/配車まわり・保守まわり)と、モード固有の形(航空に運行図表は無い)が仕分けられた
  • 対称に走ったから拾えた、対になるコンポーネント(PageHeaderBottomActionBar)・「増えるほど悪い」指標・B2B2C層

弱い側を深掘りしないと、蓄積は強い側に偏る。 運輸60画面超が残した、いちばん大きな設計原則でした。

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この記事のもとになった記録は、本にまとめました

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予備知識ゼロのAIに、実在する業種の業務を175枚作らせ続けた記録です。何が組めて、何が組めなかったか。全175回の採点と、生まれた26コンポーネントの年表を載せています。

この連載は、作者がAI(Claude)と協働で制作しています。実験・の設計、判断、公開前の事実確認は人間が行い、実作業と下書き執筆はAIが担っています。

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最終更新: 2026年8月28日

この記事を書いた人

Dengen Yosho(DGYS)

Dengen Yosho(DGYS)

UI/UXデザイナー兼デザインエンジニア デザイン歴25年以上 情報設計〜UIデザイン〜React/TypeScriptによる実装までを一気通貫で担当 大手企業のDXプロジェクトや決済アプリ領域で、デザインリードとして改善と構築を経験 現在はフリーランスとして、プロダクトのUI/UX改善とデザインシステム構築を支援 長年の実務の中で感じてきたのは、 「良いUI」はセンスではなく、再現可能な判断の積み重ねであるということ UIXHEROは、 心理学や行動科学の知見を、現場で使える設計言語に翻訳するための場所 関心領域は「ユーザーの行動が変わるUI」 人の認知・注意・意思決定の構造を理解し、 “なぜそのUIが機能するのか”を言語化することを目指している

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