UIXHERO

予備知識ゼロのAIに170画面組ませたら、デザインシステムに26個のコンポーネントが加わった

群青を一度も見たことのない予備知識ゼロのAIに、公開ドキュメントとnpmだけを渡して実業種の画面を170枚組ませた記録の総集編です。3回手組みされたものだけを作るという運用で26のコンポーネントが加わるまでと、その過程で見えた5つの法則をまとめます。

2026年8月18日
更新: 2026年8月28日
8
by Dengen Yosho(DGYS)

自作の @gunjo/ui(群青/gunjo.jpgunjo.jp を新しいタブで開く を、群青を一度も見たことのない予備知識ゼロのAI に、実在する業種の本物の画面を作らせ続ける——「やってみた」連載のまとめ本編です。170画面(#1〜#173・欠番あり) を通って分かったことと、その過程で群青に加わった26個のコンポーネントを1本にまとめました。

この記事は、コールドテストが 170画面まで進んだ時点(2026年7月)の記録 です。はその後も続いていて画面数は増えていますが、本文の数字は当時のまま残しています。この記事の値打ちは最新の集計ではなく、そこまでの過程で何が起きたかにあるからです。いまの画面数は gunjo.jp/cold-testsgunjo.jp のコールドテストの記録を新しいタブで開く で確認できます。

何をやっているのか

ルールはシンプルです。

  1. 予備知識ゼロのAI に「あなたは群青を初めて使うエンジニアです。この業種のこの画面を、できるだけ群青のコンポーネントで作ってください」と頼む。
  2. AIは 公開ドキュメント(gunjo.jp)とnpmの中身だけを頼りに、実データの画面を組む。ソースコードは見せません。
  3. AIが「このコンポーネントが無いから手組みした」「docsのコンポーネント検索がこれを勧めたが用途に合わない」と正直に報告する。
  4. その手組みの跡を集める。3つの別々の画面で独立に同じものが手組みされたら(これを「3回確認」と呼んでいます)、それは「本当に要るコンポーネント」だと確定 → 正式に作って群青に加える。
  5. 実装はコンポーネント本体だけでなく、設計の「一つの正」(SSOT=デザイン・実装・ドキュメントが食い違わない大元)までそろえてから、記事にする。

つまり、AIが既存のコンポーネントだけでどこまで組めて、どこで詰まるかを毎回測り、詰まった所だけをコンポーネントにしていく。デザインシステムを「想像で」広げるのではなく、必要だと3回証明されたものだけを正式なコンポーネントにする、という進め方です。

規模

  • 170画面(#1〜#173・欠番あり)
  • 14業種(金融/会計/小売/物流/医療/不動産/製造/教育/公共/メディア/HR/介護/飲食/保険)+運輸5モード(航空・鉄道・タクシー・バス・トラック)を、事業者向けと利用者向けの両面で完走
  • 各画面は予備知識ゼロのAIが一から組み、5段階で採点(多くが4〜4.5/5)。

群青に加わった26のコンポーネント(抜粋)

「3回手組みされたら正式なコンポーネントにする」を積み重ねて生まれたもの:

  • 時間×距離の運行図表 Stringline(鉄道/バスのダイヤグラム)
  • 状態ボード StatusBoard(配車ボード・機器ボード)/ ランキング Leaderboard(best/worst)
  • 有効期限 ExpiryBadge上限監視 LimitMonitor(値vs名前付き上限・拘束時間/在庫)
  • セグメント切替 SegmentedControl(大人/小児・個人/法人)/ ナビ行 NavRow(設定行)
  • 路線チップ LineChip(路線色+自動コントラスト)/ 区間ヘッダ OriginDestination(出発→到着・横並びのA→B)
  • セクションリスト SectionList(請求を締め別グループ+小計)/ 書類行 DocumentRow(ダウンロードボタン独立)
  • マッチカード MatchCard + 企業セル CompanyCell(会社×制度の組み合わせ表示)
  • 既存コンポーネントの拡張:Ganttの時刻軸(1日の中の時間帯)RouteStopsの多日タイムスタンプStatisticの goodWhen(増えるほど悪い指標に対応)

170画面で見えた5つの法則

コンポーネントそのものより、作り続けて初めて見えた法則の方が面白いかもしれません。

1. 「完走」とは、事業者向けと利用者向けが対称になること

ある交通モードを「事業者向けだけ作って終わり」にすると、利用者向けにこそ、足りないコンポーネントが集まる。タクシーで事業者向けを6枚作っても新しいコンポーネントはゼロだったのに、利用者向けを6枚掘ると7つ以上の新コンポーネントが出ました。だから完走の基準を「事業者向けと利用者向けが同じだけ厚い」に置くと、最も弱い側から掘ることになり、足りないコンポーネントが表に出る

2. 「作るべき理由」には強さの段階がある

この節はまとめ連載で詳しく扱っています:「作るべき理由」には強さの段階がある

  • 弱:必要なコンポーネントが無い(=足りないコンポーネント)→ 手組みされる。
  • 中:docsのコンポーネント検索が間違ったものを勧める(誤誘導)→ 使う人が信じて詰まる。
  • 強:既存のコンポーネントではHTMLの構造上どうやっても作れない。例:ダウンロード書類の行を ListCard で作れないのは、ListCard.onSelect がカード全体を1つの <button> にするから——その中に独立したダウンロードボタンを入れると ボタンの中にボタン=不正なHTML になる。これは「拡張すれば済む」では解けない、最も反論の余地ない「作る理由」。

3. 「用途からコンポーネントを探す」機能の落とし穴は6種類あった

「経路の画面だから Itinerary(旅程用のコンポーネント)」のように意味のキーワードでは合っているのに、画面の形(横にA→Bと並べるのか、縦に手順を積むのか)が逆だったり、「2つ並べるなら RelationshipRow」が人専用のつくりで、会社×制度に使うと型(TypeScript)が通らない(=扱う対象を取り違えている)だったり。検索機能の質は、型・アクセシビリティ・画面の形扱う対象が人か組織かまで含めて評価すべきだと分かりました。

4. 「3回目」は数合わせでなく、仕様を最終確定させる

MatchCard(2つのものを組み合わせて見せるカード)は3回手組みされましたが、3回目(補助金マッチング=会社×制度という種類の違う組み合わせ)が決定打でした。もし1〜2回目(同じ種類どうし)で作っていたら「会社×会社に固定」してしまったかもしれません。種類の違う組み合わせだったからこそ、「左右をどんな対象でも入れられるようにする」という設計を迫られた。3回目は、数合わせではなく仕様を最終的に固める回だったのです。

5. コンポーネントの蓄積が育つほど「作ってから再発見までの距離」が縮む

この節はまとめ連載で詳しく扱っています:作ってから再発見までの距離が縮む

作ったコンポーネントが、次にどの画面でAIに自力で見つけられるか——その間隔を測ると、初期は 17回離れていたのが、終盤は 2回(ほぼ連続)まで縮みました。距離が縮むほど蓄積は育っていて、新しい画面は「新しいコンポーネントを生む」より「既存のコンポーネントが思わぬ場面で再利用される」のが主になります。

いま、ベータへ

170画面の検証を経て、群青(@gunjo/ui)は「想像で作ったコンポーネントの寄せ集め」ではなく、必要だと3回確かめられたコンポーネントで組まれたデザインシステムになりました。この連載は、その過程を全部公開する記録です。

予備知識ゼロのAIは、優秀な「正直者」でした。手組みされた跡は、どのコンポーネントが足りないかを示す正確な地図だった——その地図をたどって、群青はここまで来ました。

この記事はZennにも掲載しています。Zenn版Zenn を新しいタブで開く

この記事のもとになった記録は、本にまとめました

あなたがAIにUIを作らせると、何が起きるか

予備知識ゼロのAIに、実在する業種の業務を175枚作らせ続けた記録です。何が組めて、何が組めなかったか。全175回の採点と、生まれた26コンポーネントの年表を載せています。

この連載は、作者がAI(Claude)と協働で制作しています。実験・検証の設計、判断、公開前の事実確認は人間が行い、実作業と下書き執筆はAIが担っています。

更新のお知らせ

サイトに載せていない実例や、新しい記事のお知らせはこちらで出しています。

読んだ内容を、自分の画面に当てるとき

UIXHEROは、記事を書くほかに、画面の検品・判定、デザインシステムの構築、実装と改善の伴走を受けています。何を頼めばいいか決まっていない段階の相談も、同じ窓口で受けます。

UIXHEROに頼めることを見る

※ 記事の内容についての質問や、書いてほしいテーマの要望も同じ窓口で受けています

記事をシェア

メールでお知らせを受け取る

最終更新: 2026年8月28日

この記事を書いた人

Dengen Yosho(DGYS)

Dengen Yosho(DGYS)

UI/UXデザイナー兼デザインエンジニア デザイン歴25年以上 情報設計〜UIデザイン〜React/TypeScriptによる実装までを一気通貫で担当 大手企業のDXプロジェクトや決済アプリ領域で、デザインリードとして改善と構築を経験 現在はフリーランスとして、プロダクトのUI/UX改善とデザインシステム構築を支援 長年の実務の中で感じてきたのは、 「良いUI」はセンスではなく、再現可能な判断の積み重ねであるということ UIXHEROは、 心理学や行動科学の知見を、現場で使える設計言語に翻訳するための場所 関心領域は「ユーザーの行動が変わるUI」 人の認知・注意・意思決定の構造を理解し、 “なぜそのUIが機能するのか”を言語化することを目指している

あわせて読みたい

この記事に関連する記事をご紹介します

「作るべき理由」には強さの段階がある — なぜ『HTML構造上つくれない』が最強か

そのコンポーネントを作るべきかの判断根拠は、弱・中・強の3段に分かれます。最も強いのは「既存のコンポーネントではHTML構造上つくれない」です。書類ダウンロード行を例に、拡張で足りる場合と新設しかない場合の線を引きます。

2026年8月18日
10

「ユースケース別の対応表」の落とし穴 — 予備知識ゼロのAIが誤誘導された6パターン

やりたいことからコンポーネントを引く一覧は、間違った先へ誘導すると、載せないより危険です。予備知識ゼロのAIに170画面を組ませて見つかった誤誘導を6つのパターンに整理し、対応表の質を測る4つの軸(型・アクセシビリティ・形・扱う対象)を示します。

2026年8月18日
12

3回確認で生まれたコンポーネントたち — 26の新コンポーネントはどう群青に加わったか

3つの別々の画面で独立に手組みされたら初めて作る、という運用を170画面続けて群青に加わった26のコンポーネントを、8つのグループに束ねて紹介します。どの3画面が根拠になったかを、画面の番号つきで辿れます。

2026年8月18日
15

もっと深く知りたいですか?

ここに掲載されていないトピックについても、リクエストがあれば解説記事を追加します。 わかりにくい点や、具体的な事例について知りたいことがあれば教えてください。

リクエストを送る

その画面、AIに作らせたあと「出していいか」誰が判断していますか?

UIXHERO の知識を、実際の画面の判断に。AIが作ったUIの課題・改善優先度・判断根拠を、 6観点で整理する軽量 Design QA です。

Design QA を見る