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「ユースケース別の対応表」の落とし穴 — 予備知識ゼロのAIが誤誘導された6パターン

やりたいことからコンポーネントを引く一覧は、間違った先へ誘導すると、載せないより危険です。予備知識ゼロのAIに170画面を組ませて見つかった誤誘導を6つのパターンに整理し、対応表の質を測る4つの軸(型・アクセシビリティ・形・扱う対象)を示します。

2026年8月18日
更新: 2026年8月28日
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by Dengen Yosho(DGYS)

自作の @gunjo/ui(群青/gunjo.jpgunjo.jp を新しいタブで開く を、群青を一度も見たことのない 予備知識ゼロのAI に170画面組ませてきた連載のまとめ第1弾。今回は ユースケース別の対応表(by-use-case)gunjo.jp を新しいタブで開く(gunjo.jpのdocsにある、やりたいことからコンポーネントを引く一覧)の設計で見つかった 6つの罠を、実際のroundつきで並べます。

なぜ「対応表の罠」を語るのか

「AIから使えるデザインシステム」を売りにするなら、この対応表は避けて通れません。docsを読んでも目的のコンポーネントに たどり着けないなら、そのコンポーネントは 無いのと同じだからです。

だから群青は最初から ユースケース別の対応表gunjo.jp を新しいタブで開く を用意しました。「経路検索の結果カードを作りたい」→ ListCard、「請求書の金額内訳を出したい」→ AmountBreakdown、というふうに、やりたいことからコンポーネントを引ける一覧です。

でもこの対応表は、間違って誘導すると、そもそも「載せない」より危険です。載っていなければ使う人は手組みに向かいますが、「あると思って使い、詰まる」ほうが、成功と勘違いされて発見が遅れるからです。170画面のコールドテストで、その罠を 6種類のパターンに整理できました。

パターン①:意味のキーワードは合うが、UIの形が逆

: 対応表で「経路 (route)」を引くと Itinerary(旅程用・縦に手順を積むコンポーネント)に誘導されます。でも本当に欲しかったのは、横に並んだA→Bの区間ヘッダ——OriginDestination でした。

  • #166国際物流(仕出→仕向)で手組み
  • #169鉄道路線別実績(起点→終点)で手組み
  • #170鉄道特急予約(東京→新大阪)で手組み

この3画面が独立に「Itinerary は縦に積む形なので、横のA→Bが組めない」と予備知識ゼロのAIに書かれ、3回確認を満たして OriginDestination を実装しました。意味のキーワードは合うのに、UIの形が逆という罠です。

同じ「東京から新大阪」を2つの形で置いた図。左のItineraryは東京9時発・新横浜9時18分停車・名古屋10時34分停車・新大阪11時30分着を縦に積む形で、途中の駅が主役になる。右のOriginDestinationは東京と新大阪だけを横に並べて矢印でつなぎ、所要2時間30分を添えた区間の見出しの形タップして拡大表示

対応表の是正tracking timelineRouteStops がHH:MM止まりだった誤誘導を「複数日は dateLabel と明記」で塞ぎ、A→Bのヘッダは OriginDestination へ誘導し直しました。

パターン②:見た目は近いが、意味が逆(扱う対象の取り違え)

: 対応表で「2人を並べる」を引くと RelationshipRow(上司↔部下)が出ます。でも RelationshipRowfrom / to の型は PersonCellProps に固定されていて、会社×制度のような組織どうしのペアには型が通りません

  • #160求貨求車(荷物×空車の二者間マーケット)
  • #172 M&A(買い手×売り手・会社×会社)
  • #173補助金マッチング(自社×制度・会社×制度という種類の違うペア)

3回目の #173で、予備知識ゼロのAIは「アバター+在席ドットの人モデルを組織に強制してくる。財務データのスロットも、スコアや要因内訳の領域もない。追加すべきは、人を前提としない MatchCard と、PersonCell の組織版 CompanyCell」と正確に切り分けました。→ 2つのコンポーネントを同時に実装。

MatchCardleft/right をあえて ReactNode にした(型を CompanyCellProps に固定しなかった)ので、会社×制度のような種類の違うペアでも使えます。見た目が近いことは、意味が正しいことと同じではない、という罠でした。

パターン③:表示専用のコンポーネントを、入力に見せる(すり替え罠)

: 対応表で「星の評価を入力させたい」を引くと Rating が出ます。しかし Ratingrole="img" の表示専用で、onChange も、フォーカスできる星も持っていません。予備知識ゼロのAIが善意で onChange を配線しても、無反応で詰まります。

  • #150タクシー乗車後評価(5段階星+良かった点タグ)
  • 使う人が動くと信じて実装 → 無反応 → 発見が遅い(最も危険な罠)

これは予備知識ゼロのAI自身が「動くコンポーネントに見えるが動かない」と表現した、すり替え罠の典型例です。足りないコンポーネントなら使う人は「無いから手組み」に向かえますが、「あると思って使い、詰まる」罠は、成功と勘違いされて発見が遅れます。この気づきが、入力用の RatingInput を課題として記録することと、対応表側に「Rating は表示専用」と明記することにつながりました。

パターン④:時間の精度が違うのに、名前が近い(時刻vs時間帯)

: 対応表で「集荷の時間帯を選ぶ」を引くと TimePicker が候補に出ます。でも TimePicker はHH:MMの「正確な時刻」を選ぶコンポーネントで、「午前 / 12-14時 / 16-18時」のような離散的な時間帯は選べません。

  • #164荷主ポータル 集荷依頼(配送業界の「時間帯」発注)
  • #165宅配便 個人向け 再配達(受け取り時間帯)

予備知識ゼロのAIは #164で TimePicker を手組みで避け、#165では最初から SegmentedControl を選びました(対応表も是正済み)。「時間帯 → SegmentedControl / RadioGroup」に誘導し、TimePicker は「正確な時刻」だけに絞ることで、時間の精度の軸の罠を塞ぎました。

パターン⑤:単一選択と複数選択を、同じ名前で誘導

: 対応表で「カード行を並べる」を引くと ListCard が出ます。でも ListCard.onSelect は、カード全体を1つの <button> にしてしまう(aria-pressedのトグル)ので、単一選択の意味になります。モバイルの経費履歴などで、複数選択+一括操作の BottomActionBar をつけたいときにこれに引っかかると、カードの中にボタンを入れ子にしてしまい、不正なHTML +フォーカス順の崩れで詰まります。

  • #149タクシー乗車履歴(月別履歴+経費の複数選択+一括ダウンロード)
  • 「モバイルで複数選択」→ ListCard + Checkbox + BottomActionBar に是正済み

この罠は、書類ダウンロード行(DocumentRow)は ListCard では構造的に不可能という、次回のまとめ記事「『作るべき理由』には強さの段階がある」の主題にもつながります。

パターン⑥:粒度違い(親と子で片方だけが載っている)

: 対応表で「案件一覧+一括割当」を引くと、DataTable は出ますが、ActionDataTable(複数選択+行アクション)は載っていません。予備知識ゼロのAIは DataTable を選び、複数選択を手組みしてから「実は ActionDataTable が既存だった」と気づきます。

  • #159トラック運送 配車管理(案件一覧の一括割当)
  • 対応表を是正し「案件一覧+一括割当 → ActionDataTable」と明記

「載せない」は、無いと分かれば手組みするだけで済みます。でも親だけ載せて子を隠すと、使う人は親で足りると思い、子の存在に気づきません。粒度の軸で、親と子の両方を対応表に載せておく必要があります。

同じ罠は Meter の仲間でも出ました。ExpiryBadge(期限)/ ReferenceValue(範囲)/ Meter(容量)/ LimitMonitor(名前付き上限)という4兄弟が揃うまで、予備知識ゼロのAIは毎回 Meter target に誤誘導されて、拘束時間や運賃の比較で詰まっていました。

量を出す4つの部品を横に並べた図。ExpiryBadgeは今日から期限の日付まで、ReferenceValueは下限と上限に挟まれた範囲の中に現在値が入っているか、Meterは満杯を右端としてどこまで埋まったか、LimitMonitorは拘束時間の上限という名前のついた線まであとどれだけかを、それぞれ基準にしているタップして拡大表示

対応表の質は4つの軸で評価すべき

170画面で見えた落とし穴を集めると、この対応表の質は4つの軸で評価する必要があると分かりました。

  1. 型 (Type) — そのコンポーネントのPropsに、狙いの引数が入るか(RelationshipRowCompanyCellProps を受け付けない)
  2. アクセシビリティ (a11y) — 意味が正しいか(ListCard.onSelect のaria-pressedは「単一選択のトグル」で、複数選択には使えない)
  3. 形 (Shape) — 横A→Bか、縦のシーケンスか(OriginDestination vs Itinerary
  4. 扱う対象 (Domain) — 人モデルか組織モデルか(PersonCell/RelationshipRow vs CompanyCell/MatchCard

この4軸のどれかですり替わっている対応表は、使う人を「あると思って使い、詰まる」に落とします。無いことを正しく伝える正直な対応表も、正解の一つです。

まとめ

  • 対応表は「すり替える」ほうが「載せない」より危険(発見が遅れる)
  • 170画面のコールドテストで、すり替え罠は 6種類のパターンがあった:
    1. 形の軸(縦vs横)
    2. 扱う対象(人vs組織)
    3. モード(表示vs入力)
    4. 時間の精度(時刻vs時間帯)
    5. 選択のスコープ(単一vs複数)
    6. 粒度(親と子)
  • 対応表の質は 型 / アクセシビリティ / 形 / 扱う対象の4軸で
  • 正直な対応表Rating は表示専用、と明記する)は、隠す対応表より安全

「AIから使えるデザインシステム」を作るなら、対応表の設計は「書式」ではなく「設計判断」です。予備知識ゼロのAIが誤誘導される回数を、「見つからない」ではなく「あると思って使い、詰まった」で数えると、直すべき優先順位が変わって見えます。

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予備知識ゼロのAIに、実在する業種の業務UIを175枚作らせ続けた記録です。何が組めて、何が組めなかったか。全175回の採点と、生まれた26コンポーネントの年表を載せています。

この連載は、作者がAI(Claude)と協働で制作しています。実験・の設計、判断、公開前の事実確認は人間が行い、実作業と下書き執筆はAIが担っています。

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最終更新: 2026年8月28日

この記事を書いた人

Dengen Yosho(DGYS)

Dengen Yosho(DGYS)

UI/UXデザイナー兼デザインエンジニア デザイン歴25年以上 情報設計〜UIデザイン〜React/TypeScriptによる実装までを一気通貫で担当 大手企業のDXプロジェクトや決済アプリ領域で、デザインリードとして改善と構築を経験 現在はフリーランスとして、プロダクトのUI/UX改善とデザインシステム構築を支援 長年の実務の中で感じてきたのは、 「良いUI」はセンスではなく、再現可能な判断の積み重ねであるということ UIXHEROは、 心理学や行動科学の知見を、現場で使える設計言語に翻訳するための場所 関心領域は「ユーザーの行動が変わるUI」 人の認知・注意・意思決定の構造を理解し、 “なぜそのUIが機能するのか”を言語化することを目指している

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