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作ってから再発見までの距離が縮む — コンポーネントの蓄積が育つとはこういうことだった

デザインシステムが育ったかどうかは、作ったコンポーネントが次に自力で見つかるまでのラウンド数で測れます。170画面のコールドテストで、この距離は初期の17から終盤の1〜2まで縮みました。距離を縮める3つの仕組みも並べます。

2026年8月18日
更新: 2026年8月28日
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by Dengen Yosho(DGYS)

自作の @gunjo/ui(群青/gunjo.jpgunjo.jp を新しいタブで開く を、群青を一度も見たことのない 予備知識ゼロのAI に170画面組ませてきた連載のまとめ第3弾。「コンポーネントの蓄積が育つ」を数値で測る方法を、170画面の実データで示します。

「コンポーネントの蓄積が育つ」って、結局なんの話?

この記事で言うコンポーネントの蓄積とは、画面を組む人の手元にある既存コンポーネントの集まりのことです。蓄積が厚ければ、手組みなしで画面が組めます。足りない箇所は「足りないコンポーネント」——そこだけ手で組む羽目になります。

では、デザインシステムを持つ人が「うちのコンポーネント、だいぶそろってきました」と言うとき、具体的には何が起きているかを説明できるでしょうか。APIが固まった? コンポーネント数が増えた? カバレッジが広がった?——どれも正解ですが、どれも直接には成熟を語らない指標です。

170画面のコールドテストを回してみて、私は1つのシンプルな「ものさし」を手に入れました。

作ってから再発見までの距離 =「新しく作ったコンポーネントが、次に自力で見つけられるまでの間隔(ラウンド数)」

  • 距離が大きい:作ったコンポーネントが次に使われるまで、他の画面をたくさん通る必要がある。蓄積がまだ薄い証拠
  • 距離が縮む:作ったコンポーネントが翌回・翌々回で自力で見つかる。蓄積が育っている証拠

初期:Stringline は作ってから 17ラウンド離れて再発見された

連載で最初にはっきりデータが取れた例は、時間×距離の運行図表 Stringline でした。

#136 → #153 = 17ラウンド離れています。この17ラウンドの間、Stringline は誰にも使われませんでした。蓄積が薄く、他の分野(HR / 介護 / 飲食 / 保険)を通る間、次の運行図表の分野に戻るまでの空白が長かったのです。

初期はどのコンポーネントもこんな距離を持っていました。作った瞬間の「見通し」と、実際に再利用されるまでの「距離」のギャップ——これが「蓄積が薄い」ということです。

中盤:距離は4 → 2 → 連続近くに縮む

同じものさしで終盤を測ると、風景が変わります。

  • Leaderboard: #155バス安全(ワースト事故率)で実装 → #159トラック配車(稼働ランキング)で自力発見。距離 = 4
  • LimitMonitor: #161トラック労務(拘束時間)で実装 → #163トラック原価(運賃比較)で自力発見。距離 = 2(業界越え)
  • SectionList: #162トラック運賃請求で実装 → #164荷主ポータル(配送履歴の月別グループ)で自力発見。距離 = 2(連続に近い)
  • NavRow: #168荷主向け請求ポータルで実装 → #169鉄道 路線別ダッシュボード(月次レポートのダウンロード行)で 同じセッション内で自力発見距離 = 1

「距離が縮む」とは、同じ蓄積の上で作業する次の予備知識ゼロのAIが、作ったコンポーネントを「自分の作業道具」として即座に見つけられるということです。作っておいて他の17画面を通してから初めて使われるのと、翌画面で使われるのとでは、蓄積の意味が違います。

データ表:主要な「作る→再発見」の距離

170画面の代表的な「作る→再発見」ペアを並べます。

コンポーネント作った回次の自力発見距離
Stringline#136バス運行#153ダイヤ編成17
PersonCell#85評価#86勤怠1
RelationshipRow#90ケアプラン#91介護記録1
ActionQueue#106鉄道指令#107乗務員1
TicketStub#128鉄道駅ナカ#129きっぷ払戻し1
ExpiryBadge#142タクシー乗務員資格#144タクシー車両(車検/保険)2
BottomActionBar#147タクシー配車アプリ#148タクシー予約1
Leaderboard#155バス安全#159トラック配車4
LimitMonitor#161トラック労務#163トラック原価2
SectionList#162トラック運賃請求#164荷主ポータル2
NavRow#168請求ポータル#169鉄道路線ダッシュ1
OriginDestination#170鉄道特急予約— (最新のため未

初期は 17 ラウンド離れていた距離が、中盤に 4 になり、終盤には 1〜2 に縮む——「コンポーネントの蓄積が育っている」を、これだけ具体的に測れます。

番外:目標つきの Meter翌1ラウンドで16回使われた

もう1つ強い例を挙げます。#65品質検査で、目標値つきで「高いほど良い」メーター(Meter direction="higher-is-better"target)を実装しました。翌 #66設備保全OEEダッシュボードで、予備知識ゼロのAIは同じ MeterOEE指標全体に16回使いました。AI自身の言葉です。

文句なしの主役。何も強制せず、そのまま使えた。16回使って、一度も引っかからなかった。

距離 = 1、その1ラウンドの中で 16回再利用されました。これは「距離」の話のもう一段深い形——距離がゼロに近づくと、次の画面で「作業道具として愛される」コンポーネントになる、ということです。

対応表にも「作る→再発見」ループがある

もう一段面白いのは、コンポーネントを作るときだけでなく、対応表の修正にも「作る→再発見」ループがあることです。

  • #164荷主ポータルで「集荷時間帯 → TimePicker」の誤誘導を発見 → 対応表を是正(「時間帯 → SegmentedControl / RadioGroup」に明記)
  • #165宅配便 個人向け再配達で、予備知識ゼロのAIが「受け取り時間帯=手組み不要・対応表に正しい注記がある」→ TimePicker の手組み ゼロ

コンポーネントを作らなくても、対応表の一文で塞げる罠は多い。安い修正が翌画面で機能したことを同じ距離で測ると、「対応表を直す」ことの複利が見えます。

同じ現象は、ActionDataTable を対応表に載せ直したときにも起きました。#159で塞ぎ、#160で予備知識ゼロのAIが対応表から直行——「案件一覧 + 一括割当 → ActionDataTable」に迷わずたどり着き、「まさに荷物を選択→オファー。偶然の発見ではなく、キット最強の瞬間」と書きました。

なぜ距離は縮むのか(仕組み)

コンポーネントの蓄積が育つ過程で、距離を縮める3つの複利が働きます。

① 3回確認ルールの複利:「3つの別々の画面で独立に手組みされた」時点で仕様が最も安定するので、作った直後は「その形が最も広く見つかる」状態になっています。次の画面で誰かがまた同じ形を欲しがる確率が高い。

② docstringとJSDocの質:#66 OEEの例のように、予備知識ゼロのAIは JSDocのタグと使用例だけで発見します。「配車 / checkout / ride / booking / food」のように docstringに複数の分野で名指ししておくと、翌日の別のAIがそれで釣れます。「docstringは、翌日の自力発見あての手紙」という言い方が、コールドテストで定着しました。

③ 対応表の成熟:初期は「経路 → Itinerary」の1対1が多かった対応表が、「経路(縦のシーケンス)→ Itinerary / 経路(横のA→B)→ OriginDestination」のように「形の軸」で枝分かれするようになると、使う人は迷わず直行できます。対応表の枝分かれが細かいほど、距離は縮みます。

「新しいコンポーネントを生む」から「既存が想定外の場面で再利用される」へ

170画面を回してきて、連載後半の主題が変わったのを強く感じました。

  • 初期: 「まだ足りないコンポーネントを作る」。1画面で2〜3個を新設することもあった
  • 中盤: 「あるはずのコンポーネントを確認する」。既存コンポーネントの言い回し(説明の間口)を広げれば済むことが増えた(教育の ScheduleGrid の例)
  • 終盤: 「既存コンポーネントが想定外の場面で再利用される」。新しいコンポーネントはほぼ出ず、代わりに MeterExpiryBadgeReferenceValueLimitMonitor と兄弟を増やして、「値を何かと比べる」仲間を形成する

距離がゼロに近い状態が長く続くと、コンポーネントの蓄積は「新しいコンポーネントを生む場」から「既存コンポーネントが磨かれる場」に変わります。これが「蓄積が育つ」の別の言い方です。

まとめ

  • 「コンポーネントの蓄積が育つ」は 作ってから再発見までの距離で数値化できる
  • 初期 = 17ラウンド、終盤 = 1〜2ラウンド。170画面で測れた事実
  • 対応表の修正にも同じ距離のループがある(#159で塞ぎ #160で検証、時間帯の是正を #165で検証)
  • 距離を縮める複利は ① 3回確認による仕様確定 / ② docstring / ③ 対応表の枝分かれの3つ
  • 距離がゼロに近づくと、蓄積は「新しいコンポーネントを生む場」から「既存コンポーネントが磨かれる場」に変わる

デザインシステムを持つ人には、このものさしを勧めたいです。カバレッジやコンポーネント数の増加より、距離の縮み具合の方が「本当に使われているか」を直接に語ります。170画面かけて分かった、群青の一番はっきりしたものさしでした。

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あなたがAIにUIを作らせると、何が起きるか

予備知識ゼロのAIに、実在する業種の業務を175枚作らせ続けた記録です。何が組めて、何が組めなかったか。全175回の採点と、生まれた26コンポーネントの年表を載せています。

この連載は、作者がAI(Claude)と協働で制作しています。実験・検証の設計、判断、公開前の事実確認は人間が行い、実作業と下書き執筆はAIが担っています。

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最終更新: 2026年8月28日

この記事を書いた人

Dengen Yosho(DGYS)

Dengen Yosho(DGYS)

UI/UXデザイナー兼デザインエンジニア デザイン歴25年以上 情報設計〜UIデザイン〜React/TypeScriptによる実装までを一気通貫で担当 大手企業のDXプロジェクトや決済アプリ領域で、デザインリードとして改善と構築を経験 現在はフリーランスとして、プロダクトのUI/UX改善とデザインシステム構築を支援 長年の実務の中で感じてきたのは、 「良いUI」はセンスではなく、再現可能な判断の積み重ねであるということ UIXHEROは、 心理学や行動科学の知見を、現場で使える設計言語に翻訳するための場所 関心領域は「ユーザーの行動が変わるUI」 人の認知・注意・意思決定の構造を理解し、 “なぜそのUIが機能するのか”を言語化することを目指している

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