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テスラーの法則と複雑性保存の法則

テスラーの法則(Tesler's Law)とは、すべてのシステムには誰かが負担しなければならない「減らせない複雑さ」が存在するという複雑性保存の法則です。UXでユーザー負担を減らす判断軸を解説します。

2026年1月23日
更新: 2026年5月18日
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by Dengen Yosho(DGYS)
テスラーの法則と複雑性保存の法則

この記事の要点(UIXHERO視点) XHEROでは、テスラーの法則を「複雑性の押し付け合い、システムの献身」と捉える。 本記事では、どんなプロセスにも消せない「核となる複雑さ」が存在することを認め、それをユーザーに負わせるか、開発者(システム)が汗をかいて引き受けるかという、UX設計の哲学的な分水嶺を整理する。

テスラーの法則 / Tesler's Lawとは?

1980年代、Xerox PARCやAppleで活躍したラリー・テスラーが提唱した「複雑性保存の法則」です。 どのようなプロセスにも、取り除くことのできない「核となる複雑さ(Core Complexity)」が存在します。 重要なのは、「その複雑さを誰が処理するのか?」という点です。

のゴールは、プログラムやデザインの工夫によって、ユーザーの肩から複雑さを取り除き、システム側に負担させることです。

テスラーの法則と関連語の違い

検索では「」「Tesler's Law」「複雑性保存の法則」が混在します。UIXHEROでは、次のように整理します。

言葉使い方
テスラーの法則/UIの文脈でよく使われる日本語表記
Tesler's Law英語表記。Larry Teslerに由来する呼び方
複雑性保存の法則法則の意味を説明する日本語表記。複雑さは消えず、どこかに移るという考え方
Law of Conservation of Complexity英語での説明的な呼び方

つまり、この法則は「シンプルに見せれば終わり」ではありません。ユーザーに見せない複雑さを、システム設計、デフォルト値、入力補助、サポート設計のどこで引き受けるかを決めるための原則です。

UXデザインでの活用事例

1. 入力自動化

  • 悪い例: 住所を「都道府県」「市区町村」「番地」と全て手入力させる。(複雑さはユーザー負担)
  • 良い例: 郵便番号を入れるだけで、住所の大半が自動入力される。(複雑さはシステム側のAPI連携が負担)

2. デフォルト値の活用

ほとんどのユーザーが選ぶ設定をあらかじめ選択状態にしておくことで、ユーザーの「選ぶ・考える」という負担を減らします。

3. 文脈の予測

ECサイトで「以前購入した商品」から「次に必要になりそうなもの(消耗品の詰め替えなど)」を提案する機能も、探索の複雑さをシステムが肩代わりしています。

UXで使う判断基準

テスラーの法則を使うときは、「複雑さを減らせるか」よりも「誰に複雑さを持たせるべきか」を考えます。

  • ユーザーが毎回同じ情報を入力しているなら、フォーム設計や自動補完でシステム側に移す。
  • ユーザーが覚えておく必要がある情報が多いなら、認知負荷を下げるために再表示・要約・確認画面を用意する。
  • 多くのユーザーが同じ選択をするなら、デフォルト効果を使って安全な初期値を置く。
  • 上級者だけが使う複雑な設定なら、段階的開示で必要なときだけ見せる。

一方で、複雑さをすべて隠すと、ユーザーは何が起きているか分からなくなります。重要な確認、取り消し、例外処理、権限や料金に関わる判断は、ユーザーがコントロールできる状態で残す必要があります。ここがシンプルさとのバランスです。

実装例: 複雑さの転嫁

住所入力を例に、ユーザーが全ての責任を負うパターンと、システムが複雑さを引き受けるパターンの比較です。

この原則を実装で見る

この原則が実装でどう形になるかを、GUNJO の部品で確かめられます。

実践ガイドライン (Practical Guidelines)

実装チェックリスト

倫理的配慮 (Ethical Considerations)

複雑さの軽減は素晴らしいことですが、「過度な抽象化」には注意が必要です。 システムがブラックボックスになりすぎて、ユーザーが「何が起きているか全く理解できない」状態になると、エラーが発生した時に誰も対処できなくなります。 また、自動化によってユーザーの選択権やコントロール感を奪いすぎないバランス感覚も重要です。

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参考文献

  • Tesler, L. (1981). "The Laws of Complexity." (Origin: Xerox PARC/Apple)
  • Saffer, D. (2009). Designing for Interaction: Creating Innovative Applications and Devices. Peachpit Press. Amazon

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最終更新: 2026年5月18日

この記事を書いた人

Dengen Yosho(DGYS)

Dengen Yosho(DGYS)

UI/UXデザイナー兼デザインエンジニア デザイン歴25年以上 情報設計〜UIデザイン〜React/TypeScriptによる実装までを一気通貫で担当 大手企業のDXプロジェクトや決済アプリ領域で、デザインリードとして改善と構築を経験 現在はフリーランスとして、プロダクトのUI/UX改善とデザインシステム構築を支援 長年の実務の中で感じてきたのは、 「良いUI」はセンスではなく、再現可能な判断の積み重ねであるということ UIXHEROは、 心理学や行動科学の知見を、現場で使える設計言語に翻訳するための場所 関心領域は「ユーザーの行動が変わるUI」 人の認知・注意・意思決定の構造を理解し、 “なぜそのUIが機能するのか”を言語化することを目指している

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