この技術でできること
- 調査目的に合った インタビュー形式を選択 できる
- 形式ごとの制約を理解し、 設計に反映 できる
- 半構造化インタビューを 基準として運用 できる
例 : 探索的な調査なのに構造化インタビューを使うと、用意した質問しか聞けず発見が生まれない。形式の選択は調査の成否を左右する
なぜ難しいか
インタビュー形式の選択は、 自由度と統制のトレードオフ 。
人は自由に話を聞こうとすると脱線し、統制しようとすると深掘りできなくなる。この「ちょうどいい塩梅」を見つけるには、各形式の特性を理解した上で 目的から逆算する 必要がある。
3つのインタビュー形式
全体像
| 形式 | 自由度 | 統制 | 適した調査 |
|---|---|---|---|
| 構造化 | 低 | 高 | 比較・定量的分析 |
| 半構造化 | 中 | 中 | 探索と確認の両立 ★推奨 |
| 非構造化 | 高 | 低 | 初期探索・エスノグラフィー |
構造化インタビュー
特徴 : 事前に用意した質問を、一言一句変えずに、同じ順序で聞く
やること :
- 質問リストを事前に完成させる
- 全参加者に同じ質問を同じ順序で聞く
- 深掘りや追加質問はしない
メリット :
- 参加者間のデータ比較が容易
- インタビュアーのスキルに依存しにくい
- 分析の再現性が高い
デメリット :
- 予想外の発見が生まれにくい
- 深い話が引き出せない
- 会話が機械的になりやすい
使う場面 :
- 大人数に同じ質問をする必要がある時
- 定量的な比較が目的の時
- インタビュアーの経験が浅い時
半構造化インタビュー ★推奨
特徴 : コアとなる質問を用意しつつ、回答に応じて柔軟に深掘りする
やること :
- 必ず聞く「コア質問」を5〜7個用意
- 回答に応じて深掘り・順序変更を行う
- インタビューガイドを作成するが、台本として読まない
メリット :
- 確認と探索の両立ができる
- 予想外のインサイトが得られる
- 自然な会話の中で深い話が引き出せる
デメリット :
- インタビュアーのスキルが結果に影響する
- 構造化に比べて分析にやや手間がかかる
使う場面 :
- UXリサーチの大半の場面(デフォルトの選択肢)
- ユーザーのニーズや課題を理解したい時
- 仮説がある程度あるが、検証と探索を同時にしたい時
UXリサーチでは半構造化が標準 。この棚の技術(質問設計、深掘り、傾聴など)は、主に半構造化インタビューで使うことを想定している。
非構造化インタビュー
特徴 : テーマだけ決めて、自由に会話する
やること :
- テーマだけを事前に決める
- 相手の話に沿って、自然に質問を展開する
- 用意した質問リストは持たない
メリット :
- 予想外の深い話が聞ける可能性がある
- ユーザーの言葉で語ってもらえる
- まだ何もわかっていない段階の探索に強い
デメリット :
- 話が脱線しやすい
- 分析が非常に難しい
- 高度なインタビュアースキルが必要
使う場面 :
- まったく未知の領域を探索する時
- エスノグラフィーの一環として行う時
- 1〜2人に深く聞く初期調査
形式の選び方
判断フロー
Q1: 参加者間の比較が必要?
→ はい → 構造化
→ いいえ → Q2へ
Q2: 仮説がある?
→ はい → 半構造化
→ まだない → Q3へ
Q3: 未知の領域?
→ はい → 非構造化
→ いいえ → 半構造化(デフォルト)
組み合わせもある
1回の調査でも、フェーズによって形式を変えることがある。
| フェーズ | 形式 | 目的 |
|---|---|---|
| 初期探索(1〜2人) | 非構造化 | 何がわからないかを知る |
| 本調査(5〜8人) | 半構造化 | 課題を深く理解する |
| 検証(必要に応じて) | 構造化 | 仮説を比較検証する |
よくある失敗
❌ 形式を意識せずに始める
「とりあえずインタビューしよう」と始め、質問を読み上げるだけで深掘りしない。
なぜ失敗するか : 形式を無意識に選ぶと、ほとんどの人が構造化寄りになる。質問リストを「消化する」ことがゴールになり、発見が生まれない。
対策 :
- 調査設計時に形式を明示的に決める
- 「この調査は半構造化で行う」と宣言する
❌ 非構造化を選んで迷子になる
自由に聞こうとして、何を聞けばいいかわからなくなる。
なぜ失敗するか : 非構造化は最も高度な形式。「自由」は「何でもいい」ではなく、「相手の話から次の質問を作り出す」能力が必要。
対策 :
- 経験が浅いうちは半構造化を選ぶ
- 非構造化でも、テーマと目的は明確にしておく
実践チェックリスト
最低ライン(Must)
理想ライン(Better)
関連技術
前提となる技術
- インタビュー技術概論 — この棚の全体像
セットで使う技術
次に学ぶ技術
- インタビュアーマインド — 形式を問わず必要な姿勢
まとめ
- この技術の本質 : 自由度と統制のトレードオフを、目的に応じて最適化する
- できるようになること : 調査目的に合った形式を選び、その形式の強みを活かせる
- 次に学ぶべき技術 : インタビュアーマインド(技術の前に持つべき姿勢)