この技術でできること
- インタビューのインサイトを 体験の時系列 に配置できる
- ユーザーの感情曲線から 改善インパクトの大きいポイント を特定できる
- 「点」のインサイトを 「線」のユーザー体験 として可視化できる
例 : 「カート離脱率が高い」は点の情報。ジャーニーマップに統合すると「認知→比較→カート追加→送料確認→離脱→他社比較→戻らない」という線の中で、どこが最大のペインかが見える
なぜ難しいか
ジャーニーマップは ユーザーの行動と感情を時系列で並べる 必要がある。
インタビューで得られるデータは断片的。ユーザーは自分の体験を時系列で話してくれるとは限らない。散らばったデータを「いつ・何をして・どう感じたか」の流れに再構成するのが、この技術の核心。
接続プロセス
全体フロー
「体験フェーズの定義」→「インサイトの時系列配置」→「感情曲線の作成」→「改善ポイントの特定」。インサイトを体験の流れに乗せて、全体像を可視化する。
ステップ1: 体験フェーズを定義する
目的 : ユーザー体験を時系列のフェーズに分ける
やること :
- 対象サービスの利用フローを洗い出す
- 5〜7フェーズに分ける
- フェーズ名はユーザーの言葉で書く
例(ECアプリ) :
認知 → 検索 → 比較 → カート → 購入 → 受取 → リピート
フェーズ定義のコツ :
- 細かすぎると情報が散る(10以上は多い)
- 大きすぎると粒度が粗い(3以下は少ない)
- ユーザーの「判断ポイント」でフェーズを区切る
ステップ2: インサイトを時系列に配置する
目的 : 親和図法やインサイト抽出の結果を、フェーズに配置する
やること :
| フェーズ | インサイト | 代表発話 |
|---|---|---|
| 認知 | SNS広告で知るが、ブランドに信頼がない | 「インスタで見たけど、聞いたことない」 |
| 検索 | キーワード検索ではなく、カテゴリから探す | 「検索って使わない。見て回るタイプ」 |
| 比較 | 送料込みの総額で比較する | 「結局いくらかが大事」 |
| カート | 送料がわからず離脱 | 「カートに入れて初めて送料がわかる」 |
| 購入 | 安心感が決め手 | 「レビューが多いほうで買う」 |
| 受取 | 配送状況が見えないと不安 | 「いつ届くかわからないのが嫌」 |
ステップ3: 感情曲線を作成する
目的 : 各フェーズでのユーザーの感情の高低を可視化する
やること :
- 各フェーズでの感情を+/−で評価
- インタビューの発話トーン・表情・言葉遣いから判断
- 感情が最も低い点 = 最大のペインポイント
出力例 :
感情曲線
😊 +++ ─ 認知(興味)
😐 + ─ 検索(まあまあ)
😐 + ─ 比較(普通)
😡 --- ─ カート(送料ショック) ← 最大のペイン
😊 ++ ─ 購入(安心)
😐 - ─ 受取(不安)
感情の根拠を必ず添える :
- 感情曲線は主観が入りやすい
- 各ポイントに「発話」か「行動」の根拠をつける
- 根拠のないポイントは「仮説」と明示する
ステップ4: 改善ポイントを特定する
目的 : ジャーニーマップから施策の優先順位を決める
改善ポイントの見つけ方 :
| パターン | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 最大ペイン | 感情が最も低い点 | カートでの送料ショック |
| 離脱ポイント | ユーザーが離れる瞬間 | 比較→他社へ |
| ギャップ | 期待と実態のずれ | 「安いと思ったのに送料で高くなった」 |
| 機会 | 感情を上げられるポイント | 受取時のサプライズ |
施策への接続 :
改善ポイント: カートでの送料ショック
インサイト: 総額の可視性が購入判断に必要
施策案:
1. 商品ページに送料を表示
2. カート画面で総額を即時計算
3. 送料無料ラインの明示
優先度: 高(5/5人が言及、離脱ログとも一致)
よくある失敗
❌ 想像でジャーニーマップを作る
インタビューをせずに「たぶんこうだろう」でマップを作る。
なぜ失敗するか : 担当者の想像は、実際のユーザー体験と大きくずれることが多い。データのない改善は的外れになる。
対策 :
- ジャーニーマップは必ずインタビューデータで裏付ける
- 最低3人分のデータがあるフェーズだけ記載する
- データがない部分は空白にして「要調査」と書く
❌ 全フェーズを均等に扱う
全フェーズに同じ量のインサイトを配置しようとする。
なぜ失敗するか : インタビューでは特定フェーズに発話が集中することが多い。均等に埋めようとするとデータのない部分を想像で埋めてしまう。
対策 :
- 発話が集中するフェーズこそユーザーにとって重要
- データが薄いフェーズは「次の調査で深掘り」とする
- 密度の偏りもインサイトの一つ
実践チェックリスト
最低ライン(Must)
理想ライン(Better)
関連技術
前提となる技術
セットで使う技術
- 親和図法 — フェーズごとのインサイト整理
まとめ
- この技術の本質 : 「点」のインサイトを「線」のユーザー体験に変換し、改善インパクトの大きいポイントを見つける
- できるようになること : データ駆動のジャーニーマップで、チーム全員が同じ体験改善に向かえる
- この棚の到達点 : ここまで来れば、設計→実施→分析→施策のサイクルが一通り回せる