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コーディング分析|インタビュー技術

インタビューデータを体系的に分類・整理するコーディング技法。オープンコーディングからアクシャルコーディングまで。

2026年3月21日
更新: 2026年8月27日
6
by Dengen Yosho(DGYS)

この技術でできること

  • 大量の発話データを意味のあるカテゴリに分類できる
  • 「なんとなく」ではなくデータに基づいたパターンを発見できる
  • 分析結果を根拠と共に報告できる

: 5人のインタビューでも数十ページの発話録が生まれる。コーディングなしでは「印象に残った話」しか報告できない


なぜ難しいか

コーディングは「感想を書く」ことではない。データに基づいて分類し、根拠を示す作業である。

多くの分析で起きる問題は、コードが曖昧・分類が主観的・結論が先にある、の3つ。


分析プロセス

全体フロー

「データ準備」→「オープンコーディング」→「アクシャルコーディング」→「パターン抽出」。発話にラベルをつけ、関係を整理し、頻度と例外を分析する。


ステップ1: データ準備

目的: 分析可能な形式でデータを整える

やること:

インタビューの録音を文字に起こす。

方法精度コスト
AI文字起こし(Otter, Notta等)中〜高
外部委託中〜高
自分で起こす高(時間)

逐語録でなくてOKな理由:

  • コーディングに必要なのは「意味」であり、一言一句の再現ではない
  • ただし、印象的な発話はそのまま残す(報告時の引用に使う)

非言語情報の残し方:

  • 笑い、沈黙、ためらい、声のトーン変化を【 】でメモする
  • 例: 「使いやすいです【3秒沈黙】…まあ、慣れれば」
  • 非言語が入ると、発話の「本音度」がわかる

話者表記の粒度:

  • I: 、U: ユーザー(基本形)
  • 複数ユーザーの場合: U1, U2, U3 で区別
  • タイムスタンプは5分刻みで十分(例: [05:00])

ステップ2: オープンコーディング

目的: 発話に意味のあるラベル(コード)をつける

やること: コード = 発話の意味を短いラベルで表現したもの

手順:

  1. 発話を1文〜数文ずつ読む
  2. 「この発話は何を言っているか」を短い言葉で表現
  3. 同じ意味の発話には同じコードをつける

:

発話コード
「毎回パスワードを入力するのが面倒で」認証の手間
「ログイン画面で止まっちゃうことが多い」認証の手間
「指紋認証があれば楽なんだけど」認証の改善要望
「買おうと思ったけど、送料が高くて」送料による離脱

コードの粒度:

  • 細かすぎ: 「パスワード入力」「ログイン画面」(統合できない)
  • 粗すぎ: 「不満」(何の不満かわからない)
  • ちょうどいい: 「認証の手間」(具体的かつ統合可能)

ステップ3: アクシャルコーディング

似たコード同士をまとめて、上位の意味のまとまりを作る工程。オープンコーディングが「ラベルを貼る」作業なら、アクシャルコーディングは「棚に整理する」作業。

目的: コード同士の関係を整理し、上位カテゴリを作る

やること: オープンコーディングで出たコードを、上位カテゴリにまとめる。

:

【上位カテゴリ: ログイン体験】
├── 認証の手間
├── 認証の改善要望
└── パスワード忘れ

【上位カテゴリ: 購入障壁】
├── 送料による離脱
├── 決済手段の不足
└── 在庫切れ

関係性の種類:

  • 包含関係: AはBに含まれる
  • 因果関係: AがBを引き起こす
  • 対立関係: AとBは矛盾する

ステップ4: パターンの抽出

目的: 頻度・強度・例外からを得る

やること:

コード出現人数出現回数
認証の手間5/5人12回
送料による離脱3/5人5回
在庫切れ1/5人2回

分析の視点:

  • 頻度: 多くの人が言っている = 共通の課題
  • 強度: 繰り返し言っている = 深刻な課題
  • 例外: 1人だけ違う = 特殊なか、見落としか

コーディングツール

ツール特徴料金
スプレッドシートシンプル、共有しやすい無料
Notion柔軟、タグ機能無料〜
Dovetail定性分析特化有料
ATLAS.ti学術研究向け有料
付箋(Miro等)と組み合わせ無料〜

おすすめ:

  • 5人以下: スプレッドシートで十分
  • 6人以上: Dovetailや専用ツールを検討

よくある失敗

❌ 結論が先にある

「ユーザーはこれを求めているはず」という仮説に合う発話だけをコーディングする。

なぜ失敗するか: 。聞きたい答えだけを拾ってしまう。

対策:

  • 仮説に反する発話も必ずコーディングする
  • 「仮説に反するコード」というカテゴリを作る
  • 他の人にコーディング結果をレビューしてもらう

❌ コードが曖昧

「不満」「良い」「悪い」のような抽象的なコードをつける。

なぜ失敗するか: 何に対する不満かがわからず、施策につながらない。

対策:

  • コードは「何について」「どう感じたか」をセットにする
  • 「不満」→「認証の手間への不満」

❌ 分析者が1人だけ

自分だけでコーディングすると、主観が入る。

なぜ失敗するか: 同じ発話でも、人によって解釈が異なる。

対策:

  • 2人以上でコーディングし、一致率を確認する
  • 一致しないコードは議論して決める
  • 最低でも、他の人に結果を見せてをもらう

実践チェックリスト

最低ライン(Must)

理想ライン(Better)


出力例

コードブック

【カテゴリ: ログイン体験】

コード: 認証の手間
定義: ログイン時のパスワード入力・認証プロセスへの負担感
例: 「毎回パスワードを入力するのが面倒」「ログインで止まる」

コード: 認証の改善要望
定義: 認証プロセスの簡略化を求める発言
例: 「指紋認証があれば」「覚えなくていい方法がいい」

分析サマリー

【主要な発見】

1. 認証の手間(5/5人)
   - ほぼ全員がログイン体験に不満
   - 特にパスワード入力が障壁
   - 指紋・顔認証への期待が高い

2. 送料による離脱(3/5人)
   - カート追加後に離脱するパターン
   - 送料無料ラインが不明確

関連技術

前提となる技術

セットで使う技術

次に学ぶ技術


まとめ

  • この技術の本質: 「感想」ではなく、データに基づいてパターンを発見する技術
  • できるようになること: インタビュー結果を「根拠と共に」報告できる
  • 次に学ぶべき技術: 親和図法(コードをグルーピングする)

次に学ぶ技術: 親和図法

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最終更新: 2026年8月27日

この記事を書いた人

Dengen Yosho(DGYS)

Dengen Yosho(DGYS)

UI/UXデザイナー兼デザインエンジニア デザイン歴25年以上 情報設計〜UIデザイン〜React/TypeScriptによる実装までを一気通貫で担当 大手企業のDXプロジェクトや決済アプリ領域で、デザインリードとして改善と構築を経験 現在はフリーランスとして、プロダクトのUI/UX改善とデザインシステム構築を支援 長年の実務の中で感じてきたのは、 「良いUI」はセンスではなく、再現可能な判断の積み重ねであるということ UIXHEROは、 心理学や行動科学の知見を、現場で使える設計言語に翻訳するための場所 関心領域は「ユーザーの行動が変わるUI」 人の認知・注意・意思決定の構造を理解し、 “なぜそのUIが機能するのか”を言語化することを目指している

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