親和図法
この技術でできること
- バラバラのデータから 隠れたテーマ を発見できる
- チーム全員が同じデータから 共通理解に近づける
- 分析の過程を 可視化し、説明可能な状態 にできる
例 : 30個のコードがあっても、頭の中だけでは整理できない。親和図法は「似たもの同士を集める」という単純な操作で、4〜6個のテーマを浮かび上がらせる
なぜ難しいか
人は「分類する」と「意味づけする」を 同時にやろうとしてしまう 。
カードを並べながら「これはこういう意味だ」と解釈を始めてしまう。すると、自分の仮説に合うグループを無意識に作ってしまう。親和図法は まず集めて、後から名前をつける という順序が命。この順序を逆にした瞬間、ただの「仮説の確認作業」になる。
分析プロセス
全体フロー
「データをカード化」→「黙ってグルーピング」→「グループに名前をつける」→「テーマ間の関係を整理」。 先にグループ名を決めない 。集まった結果から名前が生まれる。
ステップ1: データをカード化する
目的 : コーディング結果を物理的・視覚的に扱える形にする
やること :
コーディング分析で得たコードを、1つ1コードで付箋またはカードにする。
カードに書く内容 :
- コード(短いラベル)
- 代表的な発話(1文)
- 出典(ユーザーID・発話番号)
例 :
┌─────────────────────────┐
│ 認証の手間 │
│ 「毎回パスワード入力が │
│ 面倒」 │
│ U1-03, U3-07, U5-12 │
└─────────────────────────┘
ツール選択 :
| 環境 | ツール | 特徴 |
|---|---|---|
| 対面 | 付箋+ホワイトボード | 手で動かせる直感性 |
| リモート | Miro / FigJam | リアルタイム共同編集 |
| 個人 | スプレッドシート | ソート・フィルタが使える |
ステップ2: グルーピングする
目的 : 似たコード同士を近くに配置し、自然なまとまりを発見する
やること :
基本ルール :
- カードを1枚ずつ読む
- 「似ている」と感じたカードを近くに置く
- この段階では グループ名をつけない
- 迷ったら単独で置いておく(無理に分類しない)
- 同じカードが複数グループに入りそうなら、コピーを作る
チームで行う場合 :
- 最初の10分は 無言で カードを動かす
- 他の人が動かしたカードを戻してもOK
- 言語化する前に、手を動かす
なぜ無言が重要か :
- 声の大きい人の意見にグループが引きずられる
- 言語化すると、その言葉に縛られる
- 手を動かすことで、直感的な類似性を活かせる
具体例 :
【自然に集まったグループ A】
- 認証の手間
- パスワード忘れ
- ログイン画面での離脱
- 認証の改善要望
【自然に集まったグループ B】
- 送料の不透明さ
- 送料による離脱
- 送料無料ラインの不明確さ
【単独カード】
- カスタマーサポートへの信頼
ステップ3: グループに名前をつける
目的 : 集まったカードの共通テーマを言語化する
やること :
- グループを見て、「このカードたちは何を語っているか」を一言で表現
- 名前は 抽象的すぎず、具体的すぎず
- 名前を先に考えてカードをはめ込むのはNG
名前の粒度 :
- 抽象的すぎ: 「不満」→ 何の不満かわからない
- 具体的すぎ: 「パスワード入力への不満」→ カード1枚分でしかない
- ちょうどいい: 「ログイン体験の摩擦」→ 複数カードを包含、かつ施策につながる
具体例 :
グループA → 「ログイン体験の摩擦」
グループB → 「コスト可視性の不足」
単独カード → 保留(他のデータが入れば合流する可能性)
ステップ4: テーマ間の関係を整理する
目的 : テーマ同士のつながりを可視化し、全体像を描く
やること :
- テーマ間に矢印を引く(因果関係、影響関係)
- 優先度を示す(カード枚数=頻度、強い発話の有無=強度)
- 離れたテーマが実は同じ根本原因を持っていないか確認
出力例 :
【親和図 結果マップ】
┌──────────────────┐ ┌──────────────────┐
│ ログイン体験の摩擦 │───→│ 利用頻度の低下 │
│ (5/5人, 12発話) │ │ (3/5人, 4発話) │
└──────────────────┘ └──────────────────┘
↑
┌──────────────────┐ │
│ コスト可視性の不足 │──────────┘
│ (3/5人, 5発話) │
└──────────────────┘
よくある失敗
❌ 先にカテゴリを決めてしまう
「UIの問題」「機能の問題」「サポートの問題」と先にカテゴリを作り、カードを振り分ける。
なぜ失敗するか : 既存のフレームにデータをはめ込む作業になる。データから浮かび上がるテーマを見逃す。
対策 :
- カテゴリは最後に名前をつける
- 「似ている」の直感を信じる
- フレームワークは親和図の後に照合する
❌ 一人でやって完結する
自分だけの視点でグルーピングすると、偏りに気づけない。
なぜ失敗するか : 同じカードでも、人によって「似ている」の基準が違う。一人の判断は必ず偏る。
対策 :
- 最低2人以上で行う
- 一人でやる場合は、時間を空けてやり直す
- 結果を他の人に見せてフィードバックをもらう
❌ グループが多すぎる/少なすぎる
20個のコードから15グループ(多すぎ)や2グループ(少なすぎ)を作る。
なぜ失敗するか : 多すぎ: グルーピングの意味がない。少なすぎ: 抽象的すぎて施策につながらない。
対策 :
- 目安は 全コード数の1/4〜1/5 (20コードなら4〜5グループ。あくまで目安で、データの性質で前後する)
- 3枚以上のカードが集まるグループが自然
- 1枚だけのグループは「例外」として保留
実践チェックリスト
最低ライン(Must)
理想ライン(Better)
応用テクニック
2段階グルーピング
いつ使うか : コード数が30個以上で、1回のグルーピングでは整理しきれない時
まず小グループ(3〜5枚)を作り、次に小グループ同士をさらにまとめる。
手順 :
- 小グループを作る(10〜15グループ程度)
- 小グループに仮名をつける
- 小グループ同士をさらにグルーピング(4〜6大グループ)
- 大グループに名前をつける
崩れるパターン : 2段階目で無理に統合しすぎると、異なるテーマを一緒にしてしまう。「この2つは本当に似ているか?」を確認しながら進める。
仮説検証モード
いつ使うか : 既にある程度の仮説があり、データで検証したい時
通常の親和図法(ボトムアップ)の後に、仮説のフレームで照合する。
手順 :
- まずボトムアップで親和図法を完了
- 完了後に仮説のフレーム(例: AARRR、ジャーニーマップ)を並べる
- 親和図のテーマがフレームのどこに位置するか確認
- フレームでカバーされていない領域 = 仮説の穴
崩れるパターン : ステップ1を飛ばしてフレームから始めると、フレームの確認作業になってしまう。必ずボトムアップが先。
関連技術
前提となる技術
- コーディング分析 — 親和図法のインプットデータ
セットで使う技術
- バイアス制御 — グルーピング時のバイアス管理
次に学ぶ技術
- インサイト抽出 — テーマから施策へ
まとめ
- この技術の本質 : データから「テーマ」を発見するボトムアップの分析手法。先にカテゴリを決めない
- できるようになること : バラバラのデータから施策につながるテーマを見つけられる
- 次に学ぶべき技術 : インサイト抽出(テーマを施策に変換する)